見出し画像

ダンシングスネイル『怠けてるのではなく、充電中です。』(CCCメディアハウス)

 可愛いイラスト満載。短い文章で、なかなか前向きになれない心を励ましてくれる。

〈ネガティブな感情を持ったからといって悪い人になるわけではない。考えてみれば、もともとポジティブだったエネルギーが挫折により苦痛や怒りに変化したのだから、かたちが違うだけで結局は同じ量の感情エネルギーなのだ。〉そう言ってもらえると少し気が楽になる。「ネガティブな感情は持たないようにしましょう」系のアドバイスが世の中には多いのだが、持たないで済むなら苦労はない。持った時、その自分の心をどう捉えるか、ということが知りたいのだ。

〈生きていくために人と話をしなければならないときは、状況にふさわしい表情を浮かべようと努力している。だから仕事をするときも、友達に会うときも、さらには家族といるときでさえも「感情労働」が終わらない気分。〉「感情労働」とは上手い言い方だなと思う。いつもはここまで思わないが、疲れているときはこういう気持ちになるの、分かる。それとZoomをしている時は意外にこういう気持ちになりがち。自分の表情が見えるからか。

〈コントロールできない状況のせいで無気力感が訪れたときは、何事もより刺激的なものを求めるようになる。(…)リラックスできる人と過ごすより、自分を苦しめる人のことを考える。そんなときは何事にも集中するのが難しく、好きな音楽を聴いたり、じっと本を読む時間といった日常の穏やかな喜びが目に見えて減る。(…)心理的苦痛のような痛みでないと感覚を感じている気がしなくなるので、悲しいことに、自分で自分の心をより痛めつけてしまう。私たちを苦しめるシチュエーションは、たいていネガティブであったり刺激が強いものだ。だから、無気力であるほど、原因となるその状況そのものにばかり意識が行ってしまう。〉その対処法として作者は、〈その状況から抜け出すことばかり考えずに、今現在自分にできて、やりたいと思う楽しいことにエネルギーをまわしてみる〉ことを勧めている。それは分かるのだが、ある程度心が回復していないとそれも難しいような気がする。ではどうやってある程度心を回復させるかというと今の自分には「時間」しか思いつかない。

〈誰でも、面白いことや楽しいことをしているときは時間が速く過ぎるのを経験したことがあるだろう。まずは自分にできることに集中して過ごしてみれば小さな達成感が得られるはずであり、そうしているうちに時間があっという間に流れて、不幸に感じる時期をうまく乗り切ることができる。自分を取り巻く世界がどこか間違っていると思うなら、自分がそれを見つめる視点を変えてみるほうが早い。そうやって積み重ねた小さなポジティブは連鎖作用を引き起こす性質があるので、過去に諦めてしまった何かにもいつかきっと近づけるはず。〉前に引いた部分の答えのような個所だ。自分にできること、あるいは、自分にしかできないこと、をしようとする。視点を変えるのは難しいが、変えようと思う気持ちは頭の隅に置いておきたい。

〈蓮は花が完全に開くまでに時間がかかる。もし完全に開ききるまでに100日かかるとすれば、90%程度開くのに50日くらいかかり、残りの10%が開くのにさらに50日くらいかかる。ゴールが見えないとき。ずっと頑張っているのに変化がない気がするとき。蓮の花を思い出して。はたから見れば止まっているように見えるときでも、残りの10%を咲かせるためにひとりで戦っているあなた。見えなくても、絶えず咲こうとしているあなたは蓮の花。〉一番好きだった個所。

ダンシングスネイル著 生田美保訳 

CCCメディアハウス 2020.6. 1500円+税

この記事が参加している募集

#読書感想文

190,092件