見出し画像

『歌壇』2021年4月号(2)

④対談「『戦争と歌人たち』を読む」篠弘と吉川宏志の対談。心惹かれた話が多かった。

篠〈僕は初出主義だからね。〉これは篠のいつも言うことだが、本当に大切なことだ。初出が単行本になる時に微妙に(大幅に)変わることはよくある事。特に歴史を書くなら初出を見るべきなのだろう。

篠〈土岐善麿さんが「アララギ」の初期の復刻版刊行に名前を貸した際「きみ、持っていけ」なんて言って全部くれたりした。(…)前田透さんが「篠くんには持っていてもらいたい」と言って(…)〉しかし初出に当たるのは大変だ。図書館にあるとも限らない。篠の蔵書は詩歌専門の図書館並みだろうな。

国立国会図書館のデジタルコレクションはすばらしい。しかし著作権の関係等でネット上では読めないものも多い。実際に図書館に足を運ぶ必要がある。今はコロナでそれも厳しい。篠さん、蔵書をデジタル化しませんかって、どこかの組織が言ってくれないものか。

⑤吉川〈ほとんどの歌に簡単な注釈を入れていますね。〉篠〈どういう意図で引用したかということを明らかにしておきたい。(…)〉吉川〈自分の解釈を明確にする、というのは当然のことなのですが今はきちんとやっている人が少ない感じがします。〉確かに歌の解釈が一番聞きたい。

⑥篠〈この本全体に、これまで見捨てられてきた、当人も大事にしてこなかった歌を浮上させたいという意識があったからでしょうね。〉〈何故に賞にならなかったのか。こういうことを書いたのは初めてです。これはある種のタブーみたいなところです。〉必読ですね。

もちろん『戦争と歌人たち』もそうだが、この座談会も。著者の意図を知って読むと、より一層分かりやすい。不遇な歌人、賞に選ばれなかった歌人など、現代にも通じる話だ。歌壇の力関係の話だから、過去形でないと語れないところだが。

2021.4.23.Twitterより編集再掲