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『うた新聞』2021年12月号

海、見ゆ、ゆ、ゆうべだれかの霊苑のチラシを軽く畳みて捨てぬ 辻聡之  「ゆ」音の繋がりが魅力。ゆ、一音は「~から」の意だろう。海が見える~からの転換で「だれかの霊苑」という冷たい把握に至る。いつか死ぬ自分だけれど当面は関係無い。捨てる動作に孤独感を感じる。

②「短歌トラベラー」 清水正人〈いっそ未踏のままにしておくべき憧れの地である。1997年公開の香港映画「ブエノスアイレス」に登場するイグアスの滝だ。ブラジルとアルゼンチンの国境を流れ下る。監督はウォン・カーウァイ。〉毎回楽しみなこの連載。今回はイグアスの滝に行きたいだけでなく、映画「ブエノスアイレス」も見たくなった。すごく魅力的な映画評。歌も滝と響き合っている。
水は縦に落ちる他ない 泣きながら眠るから涙が耳に入る 清水正人

棒鱈のごとくささくれて働けば自由になれる(Arbeit macht frei)んじゃないのかドイツ 滝本賢太郎 「働けば自由になれる」は標語か。ドイツ語のルビが振られているのが面白い。音韻も合っている。実際には働いても自由になれなかった。メルケルも去った。ドイツはどうなる?

*フォロワーさんに、この言葉はユダヤ人強制収容所のスローガンで収容所の門に書かれている言葉、と教えていただきました。そうするとかなり読みが変わってきます。もっと勉強します!

④「現代短歌2021この1年を振り返る」「第一歌集のウチとソト」というタイトルで私川本千栄が書かせていただきました。2021年注目の第一歌集12冊を紹介。そのソト、つまり外観の話に触れました。歌集の小型化と書店での販売の関係に興味を持っています。そんな辺りを書きました。

⑤梅内美華子「書評」川本千栄『森へ行った日』きっとそれは初めて聞いた歌でしょう鳥は優しい見知らぬ鳥は〈SNSで知り合った人を殺害した事件、それを考える歌はハーメルンの笛吹き男のような怖さがある。〉自分の転機となった連作を読み解いていただきました。深く感謝します!

2022.1.24.Twitterより編集再掲