『歌壇』2019年9月号

生と死の丁度中間つてところかも誰も居ない公園でブランコを漕ぐ 佐藤通雅 この歌を読んだ途端、頭に浮かんだのは、黒澤明の映画『生きる』で主人公が「ゴンドラの唄」(吉井勇 作詞)を口ずさみながら、夜の公園でブランコを漕ぐシーン。

②篠弘「二・二六事件と歌壇」。北原白秋は青年将校たちの処刑を詠んだ一連の次に、鼠など小動物の死の一連を詠んだ。篠はそれらの歌に、銃殺された命を悼む心もちが抽象化されていると述べる。優れた読みと思う。どの歌も「多磨」から引かれており、初出にあたる大切さを思った。

より速く走らば波を逃れしか第二コーナー子らが駆け去る 梶原さい子 運動会の徒競走。観客の見守る中ひたむきに走る子供たち。ふいに作者の中で、その姿が、震災時に波から逃れようと走った数多い命と重なる。もっと速く走っていれば、もしかしたら…と。

④「「明星」文学者、四季の食卓-高村光太郎」 7月号から始まった連載。食べるのが好きだからか、開始時から面白いな~と思っていた。毎回書き手が変わり、この月は小山弘明。粗食と贅沢の落差の激しい高村。粗食の宮沢賢治に肉食を勧めているのが大きなお世話っぽくて笑える。

2019.10.13.Twitterより編集再掲