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角川『短歌』2020年1月号

①上野誠「エッセイ」〈母親は「自由、自由といっても、それは嘘ばい。先生には決められた答えのあるとよ。それば、よーく聞いてテストば書きんしゃい。」と言う。〉オカン、最強。上野誠のエッセイ新連載、次回も楽しみだ。

「周恩来ここに学ぶ」の碑の前は喫煙者の溜まり場空き缶あまた 大島史洋 一時代を象徴する人物も時代が変わればこんな扱い。場の小汚なさがよく伝わり、物悲しい。

十二単衣の洗濯はいかになされしか誰に聞いても教へてくれず 小池光 茂吉の巧まざる面白さを目指してる印象。この十二単衣は平安時代の話ではないね。

晴れたればまた鉢植を路地に出す台風ののち、戦ののちも 栗木京子 台風の後にも継続される日常。「鉢植を路地に出す」という庶民的な暮しの一コマに哀感がある。そこから「戦」へ転じるのが栗木の力技。

⑤「座談会 不易流行」穂村弘〈文語にもレベルがあるでしょ。ものすごく高度の文語を使う人がいるじゃない、だけど、ある年齢以下になってくると、文語でもせいぜい語尾の問題になってくる。〉意匠として使われているということだろうか。

この本を読まむものぞと買ひたれどあの日の気負ひいづこへゆきし 佐藤通雅 全く同じです…。机の横に積んであります。この山って無くなる日が来るのかなあ。

あんたあのかもめのセーターと言いかけて母のてのひら小さく動く 竹中優子 ちょっと泣ける歌。かもめのセーターがどうしたのか読者はさっぱり分からない。しかし作者は分かる。母はまだ全部言ってないのに。他の歌と違って、母と作者しか分からないところがいい。

乾きつつ花の少なき夏の庭シトロネラの葉しきりに匂ふ 香川哲三 最近こういう写生の歌に癒される。素直にいいなあ、と。

2020.1.18.~19Twitterより編集再掲.