『塔』2021年1月号(6)

㉘永田和宏「選歌後記」〈気分に沿った形容を探しすぎると底が浅い感情表現にしかならないところに注意したい〉〈結句の言い過ぎが気になる〉〈第三句と第五句が対比になっているのだが、その対比が単純すぎて、結句が説明になってしまっている〉〈第四句から第五句への流れもそのまますぎて、句のあいだにもう少しドキドキさせるような距離感が欲しいところ〉 とても勉強になる!特に「ドキドキさせるような距離感」って出したいものだなあ。

㉙永田和宏「選歌後記」土星より先の星には王がいる やせた両脚ふるわせながら 浅井文人〈下句が問題である。だいぶ考え、望遠鏡で観察をしている寒さだろうと取った。まさか星に痩せた両脚があるはずもない。〉異論。「星の王子様」のようなイラストを思い浮かべた。その王様の脚では?

㉚「月集評」膝の上にしぼませてあるカーディガン鳥が鳴くたび水色撫でる 江戸雪:菊沢宏美〈袖と見えているののは羽根で、飛び立ちたくて身じろぎする。鳴くのを撫ぜて宥めてやらないと羽根を広げそう。〉カーディガンがイコール鳥という、とても驚いた読み。歌の新たな魅力に気づく。

㉛11月号選歌欄評「赤ちゃんのカエルがいてる」と伝えたら「それおっさんな」と小4は言う 片山楓子:本田葵〈笑える歌。確かにカエルはもう成体なので立派な大人です。〉小さい蛙を赤ちゃん蛙とか、大人が子供ぶって言ってもダメ。赤ちゃんはオタマジャクシ。小4は冷静。

㉜11月号選歌欄評 四ツ這ひにならねば見えぬもののこと洗面所の床拭きつつ思ふ 岡本伸香:小松岬〈視点を変えれば視界が変わる。すこし不穏で、それでいて想像をかきたてられる。この世のページの端が捲れあがる感覚である。〉小さな家事を通しても異界を垣間見ることができるのだ。

㉝11月号選歌欄評 にくしみのとびらを開けてまた閉ぢて今朝はひまはり好きになれない 澄田広枝:小松岬〈一首全体にはある種の冷静さが漂う。それは主体が「にくしみのとびら」を開けっぱなしにしないからだろうか。〉憎しみの扉の開閉…。それを開けっ放しにしないという読みが迫力。

2021.2.7.~8.Twitterより編集再掲