『短歌研究』2019年9月号

①川野里子『Place to be』短歌研究賞。本当にすばらしい連作。優れた作品が賞を取る、この当たり前を喜びたい。ただ講評で佐佐木幸綱が「小見出しの意味が(…)分からなかった」、高野公彦が「所々に前書があるが(…)ほとんど理解できなかった」と言っているのには驚いた。

②『Place to be』続き。この一連の特徴は母の言葉を詞書としているところだ。高橋源一郎の講演で「肉声(ヴォイス)」への言及があったが、それを思い出した。母の言葉は直接感情に訴えかけてくる。知的な短歌とのバランスが絶妙と思った。詞書読んで泣いたのは初めてかも。

帰りたくないと泣かれてなんのためにここへ来たのか保育所は夜 山木礼子 自分の子育ての日々を思い出した。こういう計算外の事態が毎度起こる。帰ってあれしてこれしてという計画が台無し。そこで「お母さんはもっと心に余裕を」とかアドバイスされると一層イラーッとなる。

④短歌研究新人賞選考座談会。加藤治郎が「三十四年後のライト・ヴァースとして注目した」「~というライト・ヴァースの要件を満たしている」と言っているが違和感。そんなことが新人賞選考の基準になるのだろうか。

⑤松岡秀明「新・明石海人論」。「モボ」海人、という記述に驚く。モボだったんだ。もっと素朴系の人かと思ってた。ちなみにマンドリンが19世紀末から1920年ぐらいまでの「ハイカラ」というのも知らなかった。海人もマンドリンを楽しんでいたらしい。まさに萩原朔太郎のイメージ。

2019.10.12.Twitterより編集再掲