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『うた新聞』2021年5月号

①三井修「短歌トラベラー!マルタ共和国」〈マルタ共和国はかつて英領であったため、公用語は英語とマルタ語である(…)マルタ語とは何とアラビア語なのである。アラビア文字ではなくラテン文字で表記されているので気が付かなかったが、英語と並んで表記されていると解る。〉

 これはびっくり。ある言語を多言語の文字で表記する・・・。英語のカタカナ書き表記、みたいな?マルタの複雑な歴史を感じる。

城塞をいくつも巡り丘の上(え)のアーモンドの白き花に会いたり 三井修

 旅愁がかき立てられる!元々マルタは行きたかった場所。元バックパッカーの血が騒ぐ。

石をもて彫(ゑ)りたるごときはくれんの玉のつぼみの恋ほしきものを 玉城徹:永守恭子〈中空に浮かぶつぼみをありありと立体的に見せる「彫りたるごとき」が印象的だ。石を彫琢したように美しい「玉のつぼみ」が慕わしいと溜息が聞こえそうだ〉美しい歌への美しく的確な鑑賞。

 〈彫るようにして言葉を使い、それを構成することで歌は静止画面とはならず、彫りの深い世界が生まれる。その上で、言葉の力によって日常から象徴性の働きのようなものを取り出してくるのが玉城の歌ではないだろうか。〉言葉を磨いて写生し、それが象徴性に通じるということだろう。一つの理想形だ。

せいいっぱい生きてるつもりでいるけれどさくら咲くたび揺らぐのだろう 鶴田伊津〈同じ春がめぐってくることはなく、当たり前などどこにもないのだと思い出させてくれる。〉共感する。また春が来たと言っても違う春。同じ季節でも自分は毎年変わる。特に去年今年はそれを思う。

2021.6.13.Twitterより編集再掲