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『現代短歌新聞』2021年12月号

①森山晴美「12月のうたのヒント」佐藤佐太郎と宮柊二の歌を鑑賞した後〈厳冬や歳晩の歌は裸の自分を見つめるにふさわしい季節だ。心境詠でなくともよい。夾雑物のない冬は物の質感が表れやすい。「物」だけを詠んでいても、おのずから身辺、心境もにじみ出る。〉と締める。

 「物」だけ詠んで心境をにじみ出させる、短歌を始めた頃よく言われた。しかし最近、これほど難しいことは無い、と思うようにもなった。これができるから佐藤佐太郎であり宮柊二なのだと言えなくもないだろう。もちろん今後もそうありたいと思って努力はするのだが。

②小塩卓哉「短歌文法道場」〈「らむ」と「む」とを特に使い分ける必要はありませんが、眼前にない現在の推量には「らむ」、自分の意志を表すには「む」と覚えておくと、表現の幅が広がると思います。〉よし、覚えた。

子のために頭を下げて骨折ってわたしを小さく畳むということ 樋口智子        頭を下げは事実、骨折っては喩だろう。その二つを合わせたわたしを「畳む」にとても実感がある。親が自分のためにしてくれたし、自分は子のためにする。そして子の立場にいる時はそれに無頓着だ。

かつて魔女を焼きし火緋非悲立ちあがり薬罐のみづのこゑをかへゆく 柳澤美晴
 薬罐の水の音が、沸騰した時に変わる。甲高い悲鳴のような音に。そこから魔女狩りの火を思い、「ヒ」の音から緋非悲という漢字が導き出される。陥れられ殺される女の悲鳴を想起させる修辞だ。

2022.1.23.Twitterより編集再掲