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角川『短歌』2021年4月号(1)

両肩に鸚哥とまらせ帰らざる水島は責任を負ひ続け 大口玲子  ミャンマーのクーデター及び現在の状況と、戦後児童文学『ビルマの竪琴』を重ねる。さらに現在の日本の政治に対する作者の視点が重ねて描かれる。架空の登場人物・水島のみが責任を負おうとするのだ。

 過去と現在、日本とミャンマーが重層的に描かれる。「希望」の一語が痛々しい通奏低音として響く一連。やはり大口玲子は、現在の歌壇で抜きん出た力量の持ち主だと再確認した。

春の夜のスライドギターの軋む音 寂しさにもう慣れたふりして 梛野かおる 春のけだるさ、猫と過ごす物憂い午後。猫と自分を少し同化している。そして夜に聞いているスライドギターの音。本当は寂しいのだが、そんな寂しさ何ということもない、という強がり。雰囲気のいい一連。

③「連載エッセイ」堂園昌彦〈今は時代の転換期であり、新しい価値観を持った作者は今後も次々と登場するだろうが、〉今が転換期とか過渡期とかずっと言われている、とついこの間も書いた。逆に「今は転換期じゃない・過渡期じゃない」という認識では時代について書き難いのかも。

2021.5.2.Twitterより編集再掲