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角川『短歌』2020年12月号

コロナ禍に閑居して不善を為すわれも夕べは見にゆく畔の曼珠沙華 久々湊盈子 小人閑居して不善を為す、自分で言ってるところがおかしい。コロナも閑居も関係なく、例年通り曼珠沙華は咲いている。

②特集「比喩の魔力」内山晶太〈読み手をスムーズに通過させるための手法ではなく、読み手を躓かせ、また立ち止まらせるための手法として比喩がある、と言ってもきっと言い過ぎではない。〉言い過ぎではない。短歌では比喩に躓いた時にその魅力に気づくことが多い。

昨日より勇気を持って生きようとやっと思えた旅の終わりに 田中翠香 高校生の心理ってこんなに単純だろうか?短歌の連作でストーリーがあまりにはっきりあるものに私は乗れない。歌が筋書きを追う事に強く働きがちだ。

④「大学短歌バトル2020」申しわけないですべてを済ましてた お冷にカレーのスプーン入れて 吉峯行人 口先だけで謝っていた、ぞんざいにコップのお冷にカレーのスプーンを突っ込んだままで。下句が具体的。もうそんな言葉だけでは通用しない年齢、または環境になったのだろう。

大鍋で作るカレーに入れる具のざっくばらんに言ってよ「すき」は 穂波 具をざっくり大きく切るように無頓着に「すき」と言ってほしい。題が「カレー」で、それを序詞にしていてうまい。技有りの歌だが素直に読める。相手との距離感も好ましい。一緒にカレーを作ってる感じ。

⑥「親父の小言」と「青年の主張」欄が最終回になっていた。何でも思うところを言える場というアイデアは良かったと思う。タイトルが変われば受け止め方も変わるのでは。

⑦田中綾「歌壇時評」『短歌往来』9月号の特集「子育て&子供のうた」の鈴木英子の歌から『鈴木英子集』を再読している。私もこの特集の鈴木の歌に衝撃を受けた。田中の丁寧な読みと問題提起にうなずく。

2020.12.19.2020.12.19.~22.Twitterより編集再掲