『関大短歌第三巻・四号・五号』
大学短歌会誌より 好きな歌を紹介します。
路地裏に忘れたものを探しつつ夏の足音 風が変わって 石勇斎朱吉
いつだって私は大丈夫でいたい商店街で額縁を買う 渡つぐみ
四年間いちども話さないだろう人たちと共に講義を受ける 宇尾みやこ
届かない行きたかった夏 言いたいこと何もつたえられずに そして私は、 御立秋二
かぎりなく地面にちかづく漸近線上のつばめは雨を降らせる 別所明(以上第3巻)
失くしてもいいと思えるものを買う ビニール傘でお迎えにゆく 渡つぐみ
兄妹は違う人間 丸善で本を探してすれ違わない 矢倉尊
容疑者は手に恋のようなものを持ち相手をきつく抱きしめていた 宇尾みやこ
透明が愛されると信じてた 今頃やっと何かを混ぜる 御立秋二
手のひらに収まる不幸を積むようにこたつの上にはミカンがないと 石勇斎朱吉(以上第4号)
唇が乾いて切れて鉄の風 口腔内で生きている味 川風身空
ドアノブのネジを一本余らせてしまう本物の言葉みたいに 堀田朋希 (以上第5号)
2022.2.2.Twitterより編集再掲