『ねむらない樹』vol.4 2020.2.
①水銀を熱し続けていくような沈黙の後君が吾を呼ぶ 渡邊新月 密度の濃い、圧の高い沈黙だ。その限界まで来た時に、君の声で沈黙が破られる。とても丁寧な表現だ。「吾(あ)」という一人称も歌に合っている。
②加湿器の水入れ替える手は細く自分の弱さはよく知っている 渡邊新月 上句は情景で具体が生きている。下句から考えておそらく自分の手を言っているのだろう。まだ何かを強く掴めない細さ。今自分にできることをしながら自分の弱さを考える。繊細な一首。
③鎖骨のくぼみにいつからか咲いたネモフ