黒樂茶碗での夏のお茶会
今日は暑い夏の盛りに行われた大徳寺・瑞峯院でのお茶会の話をしましょう。
大徳寺は千利休の縁のお寺として有名ですが、 茶道三千家では千利休の月命日《利休忌》が交代で聚光院で行われています。また大徳寺聚光院の利休忌に合わせて大徳寺山内では月釜の茶会も催されます。既に何度か別のところでのお茶会は経験していましたが、今回のお茶会は大徳寺の瑞峯院で、と先生からお話がありました。
お茶会といえばお道具です。お茶碗についても先生からお話しがありました。
《今回は主のお茶碗として黒樂の平茶碗を使う。
サクいし水を吸うと柔らかい。
だから、茶筌や茶杓を茶碗の縁に当てるのはフリだけでいい》
とのこと。
クロラク? ってあの樂茶碗の黒ってことだよね……で、平茶碗、ということは浅いので手から茶碗がこぼれ落ちないように気をつけないと。しかも《サクい》。サクい……? ワタシの頭の中には粘土が水を吸ってグサッと壊れてしまうような絵しか出てきません。恐ろしすぎます。
平茶碗というのは口が広めの浅いお茶碗のことで、夏に使われるお茶碗です。涼しさを演出するものの一つですが、夏にしか使ってはいけないという決まりはありません。この平茶碗を大徳寺でのお茶会の主(おも)茶碗として使う、ということでした。
お茶席でお客さんが少なければお茶碗も数多くは要りませんが、お茶会となるとお客さんは大勢になります。では主のお茶碗以外はどうするのか? というと数(かず)茶碗といって、たくさん同じ種類のお茶碗が出てくるのです。
つまり、主はまさにメインのお茶碗で、いわば今日はこれを見て‼️という感じでしょうか。亭主の思い入れのあるものであることが多いです。これでお茶を頂けるのは正客(しょうきゃく)のみ。それに対して数茶碗はその他大勢といいましょうか。点て出しといって、水屋(裏)で点ててお運びの方が持って出てくる、というお茶碗です。点て出しの準備で同じお茶碗がずらりと並んでお茶が入った景色は壮観です。
この黒樂の平茶碗、本当に緊張しました。ただでさえお茶会でのお点前は緊張するというのに、その上に《サクい》と聞いたものですから。茶筅はかちゃんとお茶碗の縁に当てるふりをして、茶杓もトントン、と当てるふりだけ。みんないつも以上に緊張していましたが、無事に終わることができました。写真を見たことはあっても、ホンモノを手にするのは初めてです。粗相のないよう細心の注意をしても、万一ということもあります。一体おいくらくらいするものなのか……想像もつきません。すごく高いんだろうな、というくらいでした。
随分後になってどうやらクルマ一台分相当以上のお値段はするらしいということを知りましたが、何よりも先生が大事にしてこられたものはたった一つ。どんなお道具も大切に扱うのは当然のことです。とても貴重な経験をさせて頂いたこと、改めて感謝です。
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☆見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。
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