見出し画像

第4回 知財若手の会 〜若手で学ぶ『技術法務のススメ』〜 を終えて(3/8 19:00〜21:00 オンラインイベント)

作成者:あや

はじめに

こんにちは。知財若手の会の運営です。
今回は3月8日(水)に開催した知財若手の会の第4回のイベント(若手で学ぶ『技術法務のススメ』)の振り返りと、これからの活動についてお話ししたいと思います。

知財若手の会は「若手」で語る知財をコンセプトとして活動しています。

この会は、イベントを中心に若手同士で語る・発信できる場を提供することが目的です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

第4回 知財若手の会について

今回は内田・鮫島法律事務所の鮫島正洋先生をゲストとしてお招きし、オンライン(パテサロスペース)での開催となりました。

前半は「『技術法務のススメ(第2版)』について」と、「知財のプロフェッショナルとして第一線で活躍するには」というテーマで鮫島先生にご講演いただき、後半は質問・ディスカッションの時間を設けました。

プログラム紹介

イベント当日のプログラムについては以下のとおりです。

  • 開会挨拶(5分)

  • 鮫島先生ご登壇(40分)
    第1部 『技術法務のススメ(第2版)』について
    第2部  知財のプロフェッショナルとして第一線で活躍するには

  • 質問・ディスカッション(70分)

  • 閉会挨拶(5分)

運営側の機材トラブルにより、イベントの開始が5分ほど遅れてしまいましたが、概ねプログラムどおりの進行となりました。
質問・ディスカッションのプログラムについては、若手から鮫島先生へ、鮫島先生から若手への質問を行う旨の告知をしておりましたが、若手からの鮫島先生への質問が20近く挙がり、時間の都合上若手から鮫島先生への質問タイムのみとなりました。

第1部 『技術法務のススメ(第2版)』について

第1部は鮫島先生の経歴のご紹介から始まりました。エンジニアとして研究開発を行われていた20代の頃から、弁理士登録および弁護士登録を行い、法律事務所の設立を経て現在に至るまで、どのようなことを考え、取り組まれてきたのかということをお話しいただきました。

鮫島先生が取り組まれてきたことで、「事業と知財を関連づける」というテーマがあり、例えば会計であれば、財務諸表や監査というビジネスにおけるインフラが整備され、企業には監査法人が監査した財務諸表を公表する義務があるため、各社が真剣に取り組んでいるというお話がありました。
一方で、知財にはそのようなセオリやツールが存在しなかったことから、知財戦略セオリでの仮説の立案や、IPランドスケープでの仮説の検証の提唱に至ったとのことでした。(知財戦略セオリの詳細については、『技術法務のススメ』をご覧ください!)

近年ではコーポレートガバナンスコードの改訂で知的財産に関する項目が盛り込まれたことにより、知財戦略の開示の重要性がより一層高まっていることから、投資家に刺さる知財分析とその開示が重要であるという話がとても印象的でした。

昨年刊行された鮫島先生の著書である『技術法務のススメ(第2版)』に関しては、2014年に刊行された『技術法務のススメ(初版)』から実に8年ぶりの改訂となりましたが、「知財」と「法務」をリンクさせた「技術法務」の本は、初版の刊行当初から珍しいものだったそうです。
2014年当時は「技術法務」の考え方が浸透していなかったことから、時代の先駆けであったということも伺いました。

ちなみに、『技術法務のススメ(第2版)』については3月15日(水)まで東京メトロ丸の内線内で吊革広告を掲載中とのことですので、丸の内線ユーザーの方はご注目を!

第2部  知財のプロフェッショナルとして第一線で活躍するには

第2部は、「知財のプロフェッショナルとして第一線で活躍するにはどのようなことが重要であるか」について、以下の3点をポイントにお話しいただきました。

  • 事業価値の最大化のために知財アドバイスをする

  • 実務と戦略とをバランスよく習得する

  • 知財でできること、できないことを理解する

これから戦える知財人材になるためには、知財・法律といった実務的な知識に加え、ビジネス的なセンスが必要であること、知財ができることを把握したうえで知財にしかできない情報提供をする必要があるとのことでした。

質問・ディスカッション

質問・ディスカッションタイムではご参加いただいた方から鮫島先生へ、大変たくさんのご質問をいただきました。
一部を抜粋して掲載させていただきます。

<キャリアに関する質問>
Q.IPランドスケープや知財戦略を行う場合、どのようなキャリアやスキルを考えるべきでしょうか?
A.スタートアップに転職し、CEOに近いところでビジネスを行うことが効率的である。ただし、スタートアップでは知財プロフェッショナルとして活躍することが望まれるため、特許実務を磨くことが重要
特許実務は専門の部署や特許事務所でなければ経験を積むことが難しく、そういった場所においてもバランスよく学ぶことが求められる。

Q.新卒で企業の知財部に配属予定ですが、企業の知財部と特許事務所のメリットやデメリットを教えてください。
A.これからの知財担当者は実務とビジネスの両輪が必要である。企業の知財部は企業自体がビジネスを行っているため、担当の事業部のビジネスと知財の実務を学ぶことができることがメリットである。
一方で、特許事務所では様々な依頼が来るため、幅広いビジネスを学ぶことができるのがメリット。
まずは企業の知財部で実務を磨き、ビジネス的な見地からどのようなアドバイスができるか?ということを考えられるようになることが大切である。

<実務に関する質問>
Q.知財戦略やビジネスの観点から、契約業務に求められることを教えてください。
A.知財契約において、大企業はリスクヘッジをしすぎることにより、ビジネスのスピードが遅くなる傾向がある。
リスクヘッジとビジネスのスピードは反比例するため、どのようなスピードでビジネスを進めたいかにより、リスクヘッジの度合いを変える必要がある。
日本の大企業はビジネスにおいてスピードの利益をあまり重視していないが、事業の競争相手となる海外企業はスピード感が早いことが多い。

Q.鮫島先生が特許の専門家として経営に関わるにあたり、中小企業からの期待やプレッシャーをどのように乗り越えているか教えてください。
A.乗り越えるというより、実務を磨くことで自らの発言に説得力を持たせることにより、顧客に納得してもらうことが必要。
また、実務と併せて人間関係を構築することも重要である。

Q.後発機器を扱う企業の知財部に在籍していますが、これまで他社の後追いで成長してきたことから、必須特許になり得る技術開発が進みません。
知財部が上層部のマインドを変える仕掛けをすることは可能でしょうか?
A.これまで他社の後追いであっても順調にビジネスを行ってこれたことから、従来どおりのやり方で良いというマインドの上層部が多いのではないか。
自社の技術の転用などにより、必須特許が取れる開発テーマをIPランドスケープで示すのが知財部の役割である。
完全にコモディティ化してきたものであっても、外部環境の変化により必須特許を取得できる場合があるため、新たな市場ニーズが発生する瞬間をいかに早く察知するかが重要。

Q.市場ニーズへの嗅覚はどのように磨いていますか?
A.本やネットは情報が回ってくるのが遅いため、センスの良い人の話を聞くことが一番良いと思っている。人とのネットワークを重視している。

<知財戦略・開示・経営に関する質問>
Q.投資家に刺さる知財情報の開示について、鮫島先生の考えを教えてください。
A.投資家は投資に対するリターンを重要視しているため、特許の出願件数は投資家に刺さる情報ではない。特許の出願件数と併せ、必須特許ポートフォリオ理論や技術のコモディティ化理論などの知財戦略セオリをビジネス的に使用して説明を行うことで、投資家に刺さる情報提供ができるのではないか。

Q.企業知財において、意匠に関する知財戦略は進んでいるのでしょうか?
A.デザインの成果物である意匠について、知財戦略は存在すると思われるが、意匠に対して戦略的なことを論じるスピーカーが日本にいない。
近年になり画面の意匠も導入され、意匠の重要性はこれからもより増していくと思われる。専門家が少ないということは、第一人者になれるチャンスでもある。

Q.意匠や商標はブランド価値を創出しやすいと思いますが、特許がブランド価値の創出に貢献することは可能でしょうか?
A.特許がブランド価値の向上に貢献することは可能である。ただし、特許は先行技術が増えていくと基本技術が取れないようになるため、1個1個の特許の価値は相対的に下がっていき、分野によっては特許の意味がなくなっていくのではないかという見通しがある。

Q.鮫島先生から見て、経営層レベルで知財の重要度を適切に認識していると思われる企業の例を教えてください。
A.日本では知財の重要度を認識している会社は海外と比べ少ないが、四季報などで知財の統括担当が取締役になっているかどうかでもある程度は判断できると思われる。

1つ1つの質問に対し、鮫島先生から示唆に富んだご回答をいただきました。
質問タイムは70分を確保しておりましたが、ご参加いただいた方からの質問を次から次へといただき、むしろ時間が足りないのではないか?と思うほどでした。
鮫島先生からの名言もたくさんいただき、非常に充実した時間になりました。

おわりに

今回のイベントは当初参加枠を40名として募集しておりましたが、早々に定員オーバーとなったことから募集枠を43名に追加しての開催となり、運営も含めて50人規模のイベントとなりました。
平日の19時開始という早い時間帯での開催にもかかわらず、たくさんの方々にご参加いただきありがとうございました!

鮫島先生も、お忙しいところ知財若手の会のイベントにご出演いただきましてありがとうございました。
2時間という限られた時間のなかで、非常に濃い内容のお話を伺うことができ、知財戦略に対してより一層興味を持った若手も多かったのではないかと思われます。
また是非若手との意見交換の場を設けさせていただければ幸いです。

第5回 知財若手の会の予告

次回は知財若手の会で初のオフラインイベント(オフ会)を東京で開催予定です!
現在企画段階ではありますが、4月頃には皆さまにお知らせできるかと思いますのでご期待ください。

番外編

~LT会/読書会~

不定期開催ではありますが、「実務LT会」や「チザワカ読書会」といったイベントも実施しています。
どちらもConnpassで告知・参加登録を行っておりますので、気になる方はメンバー登録をお願いします!

・実務LT会
若手のみで行う、知財実務に関するLT会です。LT枠(4名程度)と聴講枠(~40名)に分けて参加者を募集し、LTと質疑応答を行っています。
第1回はフリーランスや特許事務所勤務、スタートアップ企業勤務の方々の4名で、各30分程度のLTが行われました。

若手だとなかなかプレゼンをする機会がない方も多いかと思いますが、LT未経験の方もお気軽に参加可能です!是非練習も兼ねてLT枠で参加してみてはいかがでしょうか?


・チザワカ読書会

5~7名程度で行う少人数の読書会です。ビジネス関連・知財関係の書籍を課題図書として、「本の内容を自分の仕事でどのように活かすか?」を中心にディスカッションしています。
これまでの課題図書は、第1回が『イシューから始めよ 知的生産の「シンプルな本質」』、第2回が『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』でした。

次回の第3回は『アナロジー思考「構造」と「関係性」を見抜く』を課題図書として、4月4日(火)の21時〜22時半に開催予定です。
少人数のイベントで話しやすい雰囲気となっていますので、ご興味のある方は是非参加してみてください。

なお、読書会の推薦本はTwitterに掲載のアンケートフォームからも広く募集していますので、おすすめの書籍がありましたら是非教えてください!

~利用者アンケート実施中~

知財若手の会の活動の改善を目的として、利用者アンケートを実施しています。知財若手の会のイベントに参加したことがある方や、これから参加しようと思っている方が対象になります。
以下のURLからご回答いただければ幸いです。
※ 回答時間の目安:約2分

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQE2GfQ4W_GDUm2z8kSYmxl8A-0n9gxFtxyx0w6urH2GPm-Q/viewform

・こんなイベントを開催してほしい!
・このテーマでLTしたい!LTしてほしい!
という具体的なご意見・ご要望も大歓迎です。今後のイベント開催にあたり参考にさせていただきます。

~運営メンバー募集~

LT会の運営をメインに携わっていただける方を若干名募集しています。
知財若手の会の活動に共感いただき、運営に興味がある方はチザワカ運営または運営代表まで、TwitterのDMをお気軽にお送りください!

チザワカ運営 @chizaiwakate
https://twitter.com/chizaiwakate
チザワカ運営代表(むう) @ y_u_py
https://twitter.com/y_u_py

以上、長くなってしまいましたが、今回のイベントにご参加いただいた方も、残念ながらご都合がつかなかった方も楽しんでいただける記事になっていたら幸いです。
引き続き知財若手の会をよろしくお願いいたします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?