見出し画像

心に引っかかった魚の骨について

なんとなく、嫌だ、と思った。
だけど同時に心臓がドクドクと激しく音を立てて動いていた。

これは、先日映画館に足を運んだときのことである。映画館で映画を見ることの醍醐味はなんと言っても大きなスクリーンと大音量による臨場感だ。それに加えて密かに楽しみにしているのが、映画が始まる前の数十分間に流れる近日公開映画の予告である。私はその中から次の標的を見つけ出すのが好きだ。

結婚するまで映画館では洋画しか見なかった。
だけど夫が洋画も邦画も映画館で見る人だったため、邦画も映画館で見るようになった。
そうなって初めて、邦画の映画上映前は予告も邦画が多いということを知った。

その日も2人で映画館に足を運んだ。
上映時刻になり、照明が落とされる。
始まった予告のうちの一つに、ある1人の男性が映った。

それが、神木隆之介くんだった。

私は彼のことを小さいときから知っている。
テレビドラマ「涙を拭いて」で末っ子を演じ、NHK大河ドラマ「義経」で牛若丸を演じていた当時の神木くんは私とさほど年齢は離れていないはずなのにそれはそれは天使のように可愛いかった。その後も大好きな映画、「千と千尋の神隠し」で坊の声を、「ハウルの動く城」でマルクルの声を演じ、付かず離れず私のそばにいてくれた。おこがましいかもしれないけれど、神木くんは私の中で近所に住む、年下の幼馴染のような、そんな存在だ。

そんな神木少年も成長し、神木青年になっていく。
子供の声をあてていた彼が、「君の名は」では青年の声をあてるようになっていた。童顔なのは変わらないけれど今では二十歳を超えた立派な大人へと成長している。

神木くんは2月15日公開の映画『フォルトゥナの瞳』で主演を務めている。
死が目前に迫っている人が透けて見えるという特殊能力(フォルトゥナの瞳)を持った主人公、慎一郎が愛する人の運命にあらがっていくラブストーリーだ。相手役は今をときめく有村架純ちゃん。

流れていく予告映像を見ていると、なんと、神木くんが架純ちゃんをバックハグしている映像が流れたのだ!! 
別に架純ちゃんが嫌いなわけではない。だけどそれを見てドキドキすると共に、なんとなく嫌だなぁと思った。

思い返せば今までリアル神木くんが本格的なラブストーリーを演じているのを見たことはない。(「君の名は」では、アニメーションを通して恋愛をしていたけれど、あれは少し違うものとしてとらえたい。)テレビ画面越しに見る神木くんはいつもにこにこと笑っていることが多かったけれど、演じる役柄もあってか、たった数分の中に私が知らない、普段とは違う神木くんを見た気がした。

この気持は一体なんだろう?
小さい頃から慣れ親しんでいる幼馴染に彼女ができた感じ?
ちょっとした嫉妬?

帰り道、本屋さんで原作本を購入した。

そしてあの日以来、CMで神木くんを見ると何となく落ち着かない。
Twitterのリアルアカウントでは知らないうちに神木くんをフォローしている私がいる。好きで好きでたまらない! という感情ではないのだけれど、喉の奥に引っかかった魚の骨のように、私の心の奥に、今日も神木くんが引っかかっている。

いただいたサポートを糧に、更に大きくなれるよう日々精進いたします(*^^*)