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【映画感想】愛を込められるか!

Amazonプライムにて配信されているのは知っていたものの、重そうなテーマだし、観るの疲れそうだなと思い渋っていた映画『ラーゲリより愛を込めて』をやっとの思いで鑑賞いたしました。

ということで、今回は二宮和也さん主演の『ラーゲリより愛を込めて』の感想を綴ろうと思います。
途中で私の思ってることが合わんわって感じましたら素直にこの書き込みを閉じてしまうことをおすすめします。


あらすじ

主演には二宮和也さんが務められ、他のキャスト陣もとても豪華!
北川景子さん、松坂桃李さん、桐谷健太さん、安田顕さん、中島健人さんがご出演なされています。

感想

史実をベースにしていること、ヒューマンドラマであることなど私個人的に好みなお話だな、と期待値バク上がり。
各映画評価サイトでの高評価も相まって観るのがかなり楽しみな映画でした。

が、正直肩透かしにあいました。ああ、こんなものか、と。
全体的に泣けるよね?感動だよね?と向こう側から言われている感じが否めず、あまり没入感もなく2時間を観ていました。

つまり、全然感動しなかった

正直面白くないなーと冒頭30分で思ってから、私の行動は早かったと思います。
すぐにペンとノートを取り出して、なぜ面白くなかったのかメモをはじめました。
なんとか全部見て、改めて頭の中で整理した「なぜ面白いと感じなかったのか」ポイントを掻い摘んで説明できたらなーと思っている所存です。
※あくまで私個人の感想ですので、文句は言わんでください。

リアリティ

まずはじめに感じたことはリアリティのなさでした。
いや、この映画をつまらなくさせる最大の原因ではないでしょうか。

これは本当に気になってしまった点なんですけどね、みなさん歯が白いんですよ。いかにも健康そうで、元気そうで。
わざわざ歯を汚くさせろ、だなんて言いません。せめて背景を暗くするなりでやりようはあったんじゃないですか?
これに関しては演出の失敗です。

また、あらすじにもあるように与えられるのはわずかな食料なんですよ。わずかの意味わかりますか?
映画内では1日1食しか配られていないようでした。
そんな状況で犬に飯あげられる?
餓死者いないんですか?

もちろん、建前上は戦争映画なので、過重労働や逃亡しようとして撃たれ、亡くなる方はいます。
が、それははじめの方のワンシーンのみな上、シベリアにおける捕虜の扱いはそれだけではなく、飢餓状態も深刻だったはずです。
これを描くことなしに残酷な現実は映せないと思います。
確かに遺体を埋めるシーンでは、やせ細った方が穴の中に入れられました。
しかし、彼らは餓死ではなく、あくまで過重労働による死です。そうとしか見えません。

戦争映画としての奥行のなさ、捕虜への浅い理解が描写としての残酷さを半減させてしまっているのです。

希望と絶望

映画の主題となっている希望。
それがどうしても弱く感じてしまいました。

これは前パートで書いたリアリティの欠如ゆえですが、絶望度がどうしても低いんです。
絶望をあまり感じないために、希望を謳われてもいまいちピンとこない。
労働大変そうだけど、のほほんと過ごす日本人捕虜たちの姿を見ているからあまり苦労が見えない。

野球のシーンにしても、あれを入れる意義は絶望とのコントラストを描くという部分にあります。絶望の中にも希望はある。
でも、視聴者である私は絶望しないんですよ。
なぜなら、悲劇的な戦争の後遺症が描ききれていないから。
そうなってしまうと、絶望はないけど、とりあえず希望は大切だよね、という状況なわけです。
野球のシーン感動しますか?
私はしません。

あと、意外なことに画面が積もった雪と相まって終始明るめなんですね。
そこ、どうにかならなかったのかしら。
いっそのこと真っ暗にしちゃえばいいのに、そうしないから視覚的に絶望感を味わえない。
俳優さんの顔なんてみえないくらい真っ暗でいいのに、なんて思いました。
特に安田さん演じる原が、二宮さん演じる山本にある告白をするシーン。
絶望的でありながら、いまいち落ちきれていない。
まあ、あの吐露に使う時間が長すぎるのも良くないところかもしれませんが。

時間

作中の中ではかなりの時間が過ぎます。
しかし、いまいち時間の経過が見られません。辛うじて字幕降伏後何年みたいなので表示されるものの、人々の描写では時間の流れはわかりません(時間が過ぎてくなーって思ったの子どもの成長くらいかな)。
さすがの大人も11年経てば見た目くらい変わるんじゃない?とは思いますが、論点はそこではありません。

普通は時間が過ぎれば過ぎるほど、希望が消えていくものです。
ゴールが見えないものは本当にキツいはずです。
それでも希望を持てる山本を描きたいんだろうな、とは思います。
それならば、周りの人たちからトコトン希望を捨てさせればいいのに、みなさん能天気なんです。
え、本当に捕虜?ってくらい。

中島さん演じる新谷に文字を教える場面がありますが、そんな余裕普通ありますか?
いや、史実として教えていたとしても、皆でそれを盛り上げられるかは甚だ疑問です。

日本降伏後9年間が映画の多くを占めています。それだけの時間が経っているのにも関わらず、彼らは能天気。
正直奥さんも能天気。手紙を受け取るまで、山本の言葉を信じている説得力がないと感じました。
時間の重みを感じない。
長い時間を捕虜として過ごしてきたなら、それなりの疲労感を見せたっていいじゃないですか。
それなのに、みんなピンピン。
いや、野球どころじゃないでしょ。

少年漫画

私のノートにはこんなことが書かれています。
そんな言葉1つで人間変われると思うなよ!!!

桐谷さん演じる相沢の奥さんが亡くなったとわかってからのシーン。
相沢が死のうとするのを止める山本ですが、え、そんなんで止められちゃうの?マジ?が率直な感想です。
相沢の絶望の軽さと山本の言う希望は綺麗事なのだと証明されたとすら思えました。
鼻で笑うよ、そんなの。

やはり、絶望と希望の対照性が上手く描かれていないがゆえに、軽いシーンを生み出してしまって、観てて悲しいとすら思いました。

もしこれが漫画やアニメという明らかに現実とかけ離れた世界なら許されるかもしれませんが、実写はかなりリアルに近い世界なので非現実的な所は違和感を覚えてしまいます。

ストーリーテラーの存在

物語冒頭、松坂さん演じる松田のモノローグがあるんですが、それを聞くとなるほど、この映画は松田から見た山本という展開をするのだな、と思うわけです。
しかし、山本たちが帰国できそうだったが他の収容所へと移動になってしまったシーン以降松田の存在感が薄くなります。

あれ?ストーリーテラー消えた?

この松田、かなり虚無というか落ちに落ちた人物なので割と現実的に描かれたキャラクターなのですが、ラストシーンで急に少年漫画やん、となります。

まとめ

題材は本当に良いだけに、映画の完成度には悲しくなってしまいました。

それはさておき、『ラーゲリより愛を込めて』の感想を書いていきましたが、正直面白いところが見つけられなかったです。
最後の北川さん演じるモジミの号泣シーンは日本映画の悪いとこ出たな、と思いましたし、結婚式?のシーンは正直なんだこれと。ほんとに何だったんだろう。

最後になりますが、私は劇場に足を運んだわけではなく、iPadという小さな画面で映画を見たので没入感はシアターに行って観てきた人たちとは全然違っているということは留意して頂きたいと思います。

俳優さんの次回作に期待をしよう、ということで今回の映画感想の締めとさせていただきます。

映画は多分もう2度と見ないです。

原作は読んでみてもいいけど、もし映画みたいに綺麗事が並べられているだけなら、うーんって感じ。

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