走らないバックスラッシュデッド [シロクマ文芸部&逆噴射プラクティス]
走らない。完成したはずのプログラムがどうしても走らない。
俺は何本目かわからない煙草の火をもみ消しながら頭をボリボリと書いた。
フケがパラパラとキーボードの上に落ちた。
「クソ」
俺は時計を見ると堪忍してアルに電話をかけた。
「ダメだ…動かねぇ」
「じゃあ、死んでもらうしかないですね」
電話の向こうの声はゾッとするほど冷たかった。
「待ってくれ」
俺は振り返って玄関のドアにチェーンがかかっているのを確認した。
すると、ベランダの窓がガラガラと開いた。
冗談じゃねぇぜ、ここは6階だぞ。
ベランダから入って来たのはガキだ。木刀を持っている。
「時間切れですよ」
言いながらガキは木刀を振りかざして襲って来た。
俺は椅子から転げ落ちて何とかその一打目をかわした。
「ダメですよ、よけたら」
ガキは楽しそうにこちらを向くと、再び木刀を振り上げた。
俺は両腕を上げたが遅かった。
奴の木刀は俺の脳天を直撃し、バキッという鈍い音が聞こえた。
そして俺は死んだ。
暗闇の中を俺は飛んだ。
そして光が見えた。全てを受け入れてくれるあの光だ。
俺はあまりの幸福感に失禁した。
気が付くと俺は狭いアパートの部屋に立っていた。
目の前で男がパソコンの画面を見ながら何か説明しているところだった。
アルだ。
俺はこの説明を聞くのは三度目だ。だが初耳のフリをした。
このプログラムを走らせないと俺は殺される。
そしてここに戻って来る。
俺はいつしか無限ループに取り込まれてしまったようだ。
この動かないプログラムのように…。
アルからUSBメモリを受け取る。
そろそろ別の動きをするか…。
アルの部屋から出ると、俺はUSBを道端のドブに捨てた。
「おやーいいのかな?」
後ろで声がした。木刀を持ったガキが立っていた。
「ちょうどいい所で会ったな、ついて来いよ」
俺はガキを誘って歩き始めた。
「どこ行くの?」
「これから殺してほしい奴のところへ行くのさ」
俺はガキを連れてタクシーに乗り込んだ。
(つづく)
ダブルハッシュタグでやってみました。
▽シロクマ文芸部
▽逆噴射プラクティス…とは
10/8から投稿開始の「逆噴射小説大賞」に向けての素振りみたいなもんです。
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