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綺麗な白いお花

「綺麗な白いお花!」
通りすがりの少女が言った。
初めて見る顔だ。
最近こっちに引っ越してきたようだ。
彼女は毎日私に挨拶してくれる。
ただ彼女と会えるのは1年に数ヶ月の間だけだ。
暖かい間しか彼女に会えないのだ。
霜が降りる頃には私は眠りについている。
来年もまた会えるだろうか。
そう思いながら眠りにつく。


「早く遊びに行こ!!」
友達と走って通り過ぎる彼女。
日が経つにつれて少しずつ成長している。
随分活発な子に育ったようだ。
「早く早く!」
そう言って道路を横切る彼女。
幸いここは路地裏。車なんてめったに通らない。
眠くなってきた。
また会えるだろうか。


「これ見た?笑、面白いよね!」
どれくらい経っただろうか。
目が覚めると彼女はすっかり大きくなっていた。
スマホを片手に通話しながら歩いている。
相手は彼氏だろうか。
幸せそうな顔をしている。
私と初めて会った時のような顔だ。


「幼馴染だからって調子に乗ってるよね」
そんな声の後に俯きながら私の前を通り過ぎる彼女。
どうしたのだろう。
後ろを歩く友人の会話から察するに
学校で嫌なことをされているらしい。
元気を出してほしい。
そう思いながら眠りにつく。


「懐かしい、時が経っても君は綺麗だね」
そう声が聞こえ目を開ける。
目の前には季節と真反対の暗い顔の彼女がいた。
「もう無理かも」
彼女はそう言うと飛び出した。








それから何年経っただろう。
「見てお母さん!綺麗なお花!」
その声でまた目を覚ます。

「ほんと綺麗なお花」
「でも不思議ね、こんな赤い花初めて見たわ」

#綺麗な赤いお花

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