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Book Review #8|FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

ここ1~2年で、かなりの話題になった本の1冊。

現代人の教養として、読んでおいて損はない。
わたしはデータ解析と統計についてはずぶの素人なので、本書で述べられている数字の見方の正当性とかはまったくわからないのだけど、少なくとも世界をこれまでとは違う視点で見ることを促してくれることは間違いない。

2020年現在、世界的な感染症の拡大により、専門家でない個人が数字やニュースをどのように捉えるか、それが自分の日常の行動に大きな影響を及ぼすようになっている。

そんな状況をふまえても、一読する価値のある本だ。

Book info

FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング オーラ・ロスロング アンナ・ロスリング・ロンランド 著
上杉周作 関美和 訳
日経BP

人間がクイズでチンパンジーに負ける?

本書は、世界に関するシンプルな13問のクイズから始まる。
例えば、以下のようなものだ。

質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A 20%
B 40%
C 60%
質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A 低所得国
B 中所得国
C 高所得国

(ちなみに質問1の答えはC、質問2はBだ)

上記の例のような世界の人口分布や保健・衛生、気候変動などに関する13の質問が並んでいるわけだが、自信をもって全て答えられる人はどれだけいるのだろうか。

ちなみにわたしは、自信をもって答えられたのは「過去20年に極度の貧困状態にある人の割合はどれだけ変わったか」のみで、それを含めても正解した数は半分にも満たなかった。

これらの問いに答えられないのは、わたしたちが無知だからだろうか?
著者によると、世界の科学者ですら正答率は低いという。
その分野の専門家であっても。

同じ質問に、チンパンジーが適当に答えたとしよう。
3択の問いだから、正答率は約33%。およそ4問に正解する。
対して、人間の平均点は?なんと2問だ。

ここから言えるのは、わたしたちが日ごろ、いかに世界を歪めながら見てしまっているかということだ。

事実に基づいて世界を見る

イメージというのは恐ろしい。

わたしたちは、つい世界を先進国と途上国に分断したり、世界はどんどん悪くなっている(貧困、気候変動、人口変化など)と考えがちだ。

「ファクトフルネス」とは、そういった根拠のない恐怖から解放し、事実(データ)に基づいて正しく世界を見ることである。

とはいえ、本書では、専門的な統計学の云々が述べられているわけではない。
そんなことをされたら、数字に弱いわたしは一瞬でkindleを窓の外に放り投げてしまいたくなる。

本書では、「物事をマイナスに捉える(ネガティブ本能)」「物事を簡略化して考えようとする(単純化本能)」といった人間の10の本能をもとに、わたしたちがどのような思い込みをして世界を解釈しているのかを論じている。
その上で、いかに情報に基づいて正しく現実を読みとるか、その指針を与えてくれている。

今、「ファクトフルネス」が求められる理由

冒頭でも述べた通り、本書は現代に生きる人々が一読して損がない教養を伝えてくれる。

特に、現在は新型コロナウイルス絡みで、日々感染者数や陽性率の数字がメディアで報じられる。
それに対し、SNSでは多くの見解が飛び交う。
何が真実なのか、自分はどのような行動をとるべきなのか、わからなくなってしまう。

そんなとき、目の前にどんとあらわれた数字に翻弄されずに、冷静に判断するには、本書で述べられている人間の本能の理解が大いに役立つ。
人々の不安を煽る言葉が躍る中で、自分なりに落ち着いて解釈することができるのだ。

危機感を持つ必要がないと言いたいわけではない。
それに、データなんて恣意的にいかようにも捉えられるし、数字でとらえられない現実が存在するのもわかっている。

ただ、煽り煽られるこの世の中で、こういったリテラシーがあることは、自分が生きやすくなるということであると思うのだ。

教養はライフハック

自然科学にせよ、社会科学や人文科学にせよ、教養を身につけるということは生きやすくなることだと思っている。

(そういえば、この記事でも同じようなことを語った気がする)

文句をいったり不安になったり、ってことを少しでも軽減してくれるのが教養の効果の1つだと考えると、「ファクトフルネス」はまさに、現代人に欠かせない教養だと思う。

グローバル化が否応になしに進む今、世界の状況は専門家だけが理解すべきものではない。

2,000円にも満たない金額で、一瞬で手のひらの中に情報を舞いこませられる時代だからこそ、是非オススメしたい1冊。

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2020.9.3 追記
こちらのTEDもオススメ。
20分弱で本の概要(一部)が把握できます。

ハンス&オーラ・ロスリング: 世界について無知にならないために
http://go.ted.com/bbmD1Q

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