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一期一会の出会い。茶事は最高のエンターテインメント

コロナになってお茶の世界からなくなっていたもの、茶事。茶事とは、ごく少人数のお客様を招いて、主人が茶と懐石でおもてなしをする、茶の湯のメインイベントとも言えるものです。一般的な「茶会」はカジュアルで参加人数も多く例えるなら立食パーティーというイメージですが、茶事はプライベートダイニングにご招待いただくような特別な機会。亭主はもちろん、客にもきちんとした作法と教養が求められます。

狭い茶室で行われ飲食を伴う茶事は、コロナ禍で各流派のお家元からも自粛が呼びかけられました。茶の真髄とも言える茶事がなくなり、残念でならないと思っていましたが、おそらく1年ぶりに茶筅供養の茶事にお声がけいただきました!茶筅供養(ちゃせんくよう)とは、今まで使った茶筅(お茶を点てるときに使う竹の道具)に感謝をし、隅でお焚き上げをしながら行う仏事の茶事です。食事は精進料理、道具も仏事を意識した設えとなります。

客は茶筅を席入の時に火にくべ、般若心経を全員で唱えてから精進料理をいただきます。その間に火に燃やされた茶筅は燃え尽きて灰となるのです。

そして茶筅が姿を変えた灰を使いつつ炭手前で湯を沸かし、濃茶薄茶をいただきます。茶筅の魂が宿っているような気持ちでいただく一服は、ほかでは味わえない感動的なものでした。

わずか数人のために亭主が何日もかけて準備し、心尽くしの気持ちで客をもてなし、客は亭主の趣向を楽しみ、五感で味わい、感謝する。まさに二度と同じ時はない一期一会の大人の楽しみ。早くコロナが終息し、茶事が復活してくれることを祈らずにはいられません。

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