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カムアゲイン

扉を開くと、待っていた時間が始まる。開演の19:30までまだ少しだけ時間があって、1番奥のテーブルに通された。
この日はほぼ満席で、海外から?いつも見ないお客さんもちらほら来ていた。同じテーブルの2人も英語で話をしている

最初の曲はもしかしたら、過去に聴いたことがあったかもしれないオリジナル曲で、梨花子さん作。ピアノの魚返さんは、魔術師のように縦横無尽に音を奏で、このトリオにしかないグルーヴを生み出していた。『梨花子Trioのライブに来た』と実感してジッと観ていると、店内の40くらいの瞳も同じようにジッと3人の様子を固唾を呑んで見守っているようだった。

2曲目も梨花子さんのオリジナル曲。さながら壮大な海の旅を思わせるようなストーリー性のある曲だった。旅は時に港町に立ち寄り、異国の打楽器のリズムが聴こえてきて、東から西から人々が集まり賑わっている。船は帆船でまた航海が始まる。海が荒れ、嵐の中船は目的地を目指して進む。といった感じだ。

3曲目は落合さんのオリジナル曲で、原題は英語だが、落合さんからタイトルの意味が演奏の前に話された。
この日は、ステージから一番離れた席に座っていたのだけれども、ハイチェアだったので、ステージ全体がよく見えた。左に魚返さんのピアノ、右に梨花子さんのドラム、中央奥に落合さんのベースとトライアングルの配置。通常は、ピアノトリオの編成は、ベースとドラムの2人がピアノをサポートするので、リズムセクションという言い方をする。ベースとドラムが時折ソロを取ることはあっても脇役として登場する。
けれども、梨花子Trioの場合は違っていて、この曲のように落合さんが主人公になるとリズムセクションは、ピアノとドラムになる。ピアノは打楽器でもあるので、リズムセクションになる。トライアングルの頂点がドラムの時は、ピアノとベースがリズムセクション的に機能するから、2曲目のような壮大な物語のように耳に入ってきたのかもしれない。しかもこの3人の場合は、音の重なりが縦の関係ではなくて、リズムセクションであっても左右が均等の関係で、あたかも不恰好な三輪車の両輪のようでいて、かえってそのサウンドが心地よい。両輪が丸い車輪ならスマートなところを、両輪はドリルとハサミみたいな違うアイテムの三輪車がゴツゴツと自己主張しながらペダルがこがれてゆく。

3曲でエネルギーが全開になった後で聴く4曲目は、すぐにビル・エバンスの曲だとわかった。エバンスの叙情的で繊細なインタープレイも、もはやスタンダード曲を聴くような感じで涼しくて耳に心地よい。

1stステージのラストと最後のアンコールは、ジャズのスタンダード曲。オールドスタイルのジャズもこのグループのアレンジで聴けるという意味で貴重で、本編の付録みたいに思えた。

2ndステージは、梨花子Trioのライブらしい曲が集まっていて、1曲目が魚返さんオリジナル。3曲目と4曲目は梨花子さんオリジナルの中でも馴染みのある2曲だった。
2曲目は、ブラジルのアンドレ・メマーリが作曲したこれぞサウダージと感じる美しい曲。梨花子さんやごさきさん(ピアニストの後藤沙紀さん)がライブで取り上げていて、知るようになった大好きなナンバーだった。

1st
1.Luna Soñadora
2.Volk
3.親しきものにも礼儀あり(日本語)
4.For Nenette
5.I thought about you.

2nd
1.もず
2.Vento Bom
3.299
4.白玉Blues

アンコール
They can’t take that way from me

梨花子Trio
Ds.鈴木梨花子 Pf. 魚返明未 Ba. 落合康
江古田そるとぴーなつ



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