不死鳥(身体喪失済)、孫にエルメスを貢ぐ。
その日は肌寒く、上着を羽織らなかったのを少しだけ後悔した。目的地に着いてスタッフに名前を告げ、店内で待機する。平日の夕方だからか、それほど混み合っていない。あるひとは、ちっちゃいケリーを肩がけしていた。
でも着ているものは(それなりに上等そうではあったものの)カジュアルで、かつセンスがよく、いわゆる「お金持ち」という印象は受けない。堅実にコツコツ貯金してたまの贅沢を楽しむふつうのひと、という感じ。
こういうところもはんめ──韓国語で「おばあちゃん」を意味する言葉──がエルメス贔屓だった理由なのかもしれない。フーディにデニムといった格好でエブリンを斜めがけしているひともいたので、古着のラコステニットのぼくも気負わずに済む。ショップ自体はキンキラキンだけど。
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