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本の紹介 山崎ナオコーラ「ミライの源氏物語」

山崎ナオコーラ「ミライの源氏物語」(2023)淡交社


この本は、源氏物語(げんじものがたり)を題にしていながらも、そのテーマは現代的な問題です。


取り上げているテーマは以下の通り。まさに現代の諸問題がテーマとして扱われています。

ルッキズム――末摘花
ロリコン――紫の上
マザコン――桐壺の更衣と藤壺
ホモソーシャル――雨夜の品定め
貧困問題――夕顔
マウンティング――六条御息所と葵の上
トロフィーワイフ――女三宮
性暴力――女三宮など
産んだ子どもを育てられない――明石の御方
不倫――雲居の雁と他のたくさんの人たち
ジェンダーの多様性――書かれていない人たち
エイジズム――源典侍
出家――浮舟
受け身のヒロイン――桐壺更衣と浮舟


時に古典の世界で描かれることは、現代に置き換えれば問題とされることがあります。しかし、それは当時としては問題なかった、昔の話だから、と片付けられることも多いのです。それを、あくまで現代の文脈で捉え直す試みとなっています。


読んでいくと、現代的な問題を見つめ直すとともに、ちゃんと源氏物語の世界に親しむことができるようになっています。

読み終えてみれば、ちゃんと源氏物語の全体の流れをつかむとともに、キーとなるエピソードを知ることができます。

そしてさらに、そこから現代を見つめ直すとともに、そのことによって源氏物語の世界がとても身近に感じられるようになるのです。


一つひとつの章はそれほど長くなく平易で読み易い文体になっています。源氏物語の世界への入り口としても、現代の問題への入り口としても、非常に興味深い作品です。

https://www.fujisan.co.jp/product/1281679709/b/2507161/



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