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美術館巡り「浮世絵の別嬪さん」大倉集古館(6/9まで)

大倉集古館(東京・港区虎ノ門)で開催中の「浮世絵の別嬪さん 歌麿、北斎が描いた春画とともに」のレポートです。


特別展 浮世絵の別嬪(べっぴん)さん―歌麿、北斎が描いた春画とともに
【会期】4月9日(火)~6月9日(日) 10:00~17:00
*前期:4月9日(火)~5月6日(月)
*後期:5月8日(水)~6月9日(日) 

浮世絵は、江戸時代に花開いた代表的な美術の分野です。本展覧会では、そうした浮世絵の中でも、いわゆる版画ではなく、浮世絵師たちが描いた絵画作品である肉筆浮世絵に焦点をあて、浮世絵の幕開けとして17世紀の初期風俗画と岩佐又兵衛から始まり、菱川師宣、喜多川歌麿や葛飾北斎をはじめとした数々の著名な浮世絵師たちの活躍を、肉筆美人画を通じて幕末までたどります。また、浮世を謳歌した江戸時代の人々の性に対するおおらかさを示すものとして、欠くことができない艶やかで美しい春画の名品も合わせてご紹介いたします。


テーマは大きく5でした。


第1章 初期風俗画と又兵衛、そして師宣の誕生―17世紀

岩佐又兵衛、菱川師宣、田村水鷗、菱川師平、山崎女龍


第2章 安度、長春の隆盛―18世紀前期までの美人画

懐月堂安度、懐月堂安知、宮川長春、松野親信、宮川長亀、川又常行、宮川一笑、宮川春水、鳥居清春


第3章 春章、歌麿、栄之の精華―18世紀後期の美人画

礒田湖龍斎、勝川春章、勝川春霍、窪俊満、水野盧朝、勝川春暁、北尾政演、西川祐信、祇園井特、鳥居清長、月岡雪鼎、歌川広重、烏文斎栄之、歌川豊広、喜多川歌麿


第4章 葛飾北斎と歌川派の浮世絵師―19世紀の美人画

葛飾北斎、勝川春英、勝川春扇、勝川春周、勝川春好、二代葛飾戴斗、蹄斎北馬、抱亭五清、菊川英山、渓斎英泉、歌川豊国、歌川豊春、歌川豊広、歌川国芳、歌川広重、香蝶楼国貞、月岡芳年


第5章 めくるめく春画の名品

歌川国貞、葛飾北斎、歌川豊広、喜多川歌麿、烏文斎栄之、宮川長春、歌川豊春、烏居清信


古典文学にまつわる作品もいくつかありました。

菱川師平「伊勢物語 河内越え」
勝川春章「雪月花図」
歌川国貞「金瓶梅」
烏文斎栄之「源氏物語春画巻」

特に、勝川春章「雪月花図」は、清少納言が簾をかかげて外を眺める様子を引用した「雪」、紫式部が文机で物を書いている様子を引用した「月」、小野小町が桜の花を眺める様子を引用した「花」とで構成されています。

それぞれ、当世風の女性が描かれていますが、平安時代の三人の女性を引用していることがわかります。(諸説あるようです)


テーマは「別嬪さん」とありますが、そこにはさまざまな立場の女性や、若衆が登場します。

「美人」といったい何なのか。それぞれの時代、それぞれの作家による「美人」を見比べていくのもおもしろいです。

浮世絵の「美人」といえば、歌川派の美人をイメージしていましたが、長い江戸の時代の中で、さまざまな美人の描かれ方があったことを知りました。

また、今回の展示のほとんどは女性や若衆だけが描かれますが、春画だけは別です。情を交わす男性も描かれます。

春画の中で描かれるのは、ある種のコミュニケーションです。情を交わす者どうしの関係性や、やりとりが伺えるような作品になっています。その表情やしぐさの様子に物語があるように思えます。

美術としてのさまざまな美しさに触れると同時に、そこにある物語を楽しむのも、浮世絵の魅力だと思います。


【大倉集古館】



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