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漫画の感想

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記事一覧

トモちゃんはすごいブス(感想)_殻に閉じこもって、孤独にならないこと

『トモちゃんはすごいブス』は漫画アクションで2010~2013年に連載されていた漫画で、作者は森下裕美。 主要人物たちの様々なエピソードが小出しにされるから誰がいつ何を言っていたのかを整理しづらいけど、コミュ障の引き籠もりが泥臭く自立していく様子からは前向きな気持ちを貰える。 以下はネタバレを含む感想などを。 天涯孤独になったコミュ障女の成長大阪で父と二人で暮らしていた20歳のチコは父の急死によって天涯孤独に。しかも人付き合いが苦手で中学1年生の頃から家に引き籠もっていたか

春と盆暗(感想)_4つの風変わりな恋愛

『春と盆暗』はアフタヌーンで2016~2017年初出の漫画で、作者は熊倉献。 収録された4つの短編にはどれも奇妙な質感があるけれども、読後感はほっこりとした気持ちになれる。 以下はネタバレを含む感想などを。 テンポよくサクサク進む短編収録されているのはボーイミーツガールを扱った4つの短編で登場する男女に共通するのは、少しサエない感じの男子と独特の感性を持つ女子の組み合わせということ。 湿度の低いカラッとしたストーリーはテンポよく進み、展開に意外性もあってクセになるから読み返

ブランクスペース(感想)_フィクションを必要とする人たちのこと

「ブランクスペース」はふらっとヒーローズで2020~2022年に連載されていた漫画で、作者は熊倉献。 理知的なスイと大雑把なショーコという正反対的な性格の二人の女子高生を中心にした物語は、フィクションを必要とする人の感情が深堀りされていて興味深い。 以下はネタバレを含む感想などを。 輪郭によって出来た穴を”ある”とする感覚舞台は多摩東部に位置するという設定の空代市(そらしろし)とあって、東京都内だけれども豊かな自然も残る住宅街といった風景が想像される。 都立高校へ通う狛江シ

ダンジョン飯(漫画感想2)_栄養補給以外の食べる意味について

「ダンジョン飯」はハルタで2014-2023年に連載されていた漫画で、作者は九井諒子。 長くなったので、2つに分けた感想の前半はこちら。 2024年1月~ 原作へ忠実な内容でアニメ放映されているけど、以下はネタバレを含む漫画版の感想などを。 欲望を喰らう悪魔ライオスたちは妹のファリンを救うためにレッドドラゴンを倒すという目的で迷宮探索をしてレッドドラゴンを倒した。 しかし、シスルによってファリンをハーピーにされてエルフたちが迷宮へやってきたことで迷宮の主を拐かしている翼獅子

ダンジョン飯(漫画感想1)_架空の食材で現実の料理へ仕上げる楽しさ

「ダンジョン飯」はハルタで2014-2023年に連載されていた漫画で、作者は九井諒子。 架空の食材を調理して見た目は現実に存在する料理に仕上げるメタ構造と、RPGなどで定番の世界観の合せ技が最高の画力で表現されている。 2024年1月~ 原作へ忠実な内容でアニメ放映されているけど、以下はネタバレを含む漫画版の感想などを。 80年代RPGを連想させる世界観とある小さな島の小さな村で地下墓地の底が抜け、1千年前に滅びた黄金の国の王を名乗る男があらわれ「狂乱の魔術師を倒せばその国

おとなになっても(感想2)_自分と他者を赦すこと

「おとなになっても」は講談社の月刊誌Kissで2019~2023年にかけて連載されていた漫画で、作者は志村貴子。 感想を2つに分けたので、これまでの感想はこちら。 以下、ネタバレを含む感想などを。 自分の気持ちに向き合い、対話を重ねる綾乃綾乃と朱里の出会いは互いにとって運命的だったとはいえ、35歳という年齢的なことや社会的な様々なしがらみを考えたら、その関係はいつ終わったとしてもおかしくなかった。 二人が一緒になるための障壁は独身で同性愛者の自覚がある朱里の側にほぼ無くて、

おとなになっても(感想1)_不倫と真剣に向き合うこと

「おとなになっても」は講談社の月刊誌Kissで2019~2023年にかけて連載されていた漫画で、作者は志村貴子。 志村貴子作品について『敷居の住人』の頃から読み続けており、コマを省略することで読み返してから気付くような言語化しづらい複雑な感情を読者に想像させる余地を残してくれるところが好き。 以下、ネタバレを含む感想などを。 周囲を巻き込み、恋愛をする大人たちきっかけは小学校教師をしている大久保綾乃が仕事帰りに立ち寄ったダイニングバーでお酒を飲んでいると、隣のカウンター席に

違国日記(漫画感想:3)_リスクを取って、傷つきながら得たもの

「違国日記」は祥伝社から発売されている「FEEL YOUNG」で、2017年7月号から2023年7月号まで連載行さていれた漫画で、作者はヤマシタトモコ。 読み始めた当初はそんなに惹かれなかったのだが、最後まで読み終えてさらに何度か読み返すうちにジワジワとくる。 これまでの感想はこちら。 以下、ネタバレを含む感想などを。 将来について考えることの必要性朝は高校生活に慣れてくると、徐々に「自分には何もない」ことに悩むようになる。そもそも性格的に主体性が無かったのもあるが、両親が

違国日記(漫画感想:2)_他人に過度の期待をしない

「違国日記」は祥伝社から発売されている「FEEL YOUNG」にて、2017年7月号から2023年7月号まで連載されていた漫画で、作者はヤマシタトモコ。 コミュ障で言葉のキツい女と、「自分には何もない」と悩む女子高生の二人を中心にした物語。 このテキストは3回に分けた感想の2つ目で、これまでの感想はこちら。 以下、ネタバレを含む感想などを。 個人の感情を大事にする人同士が完全には理解し合えないことをもう少し掘り下げてみると、根底には槙生が朝に対して繰り返して言う『自分の感情

違国日記(漫画感想:1)_個人の自由を大切にすること

「違国日記」は祥伝社から発売されている「FEEL YOUNG」にて、2017年7月号から2023年7月号まで連載されていた漫画で、作者はヤマシタトモコ。 キレイ過ぎる見た目の人間の絵がなんとなく苦手で敬遠してきたのだけど、読み始めたら止まらなかった。こだわりを感じる言葉遣いに心を揺さぶられる。 以下、ネタバレを含む感想などを。 こだわりを感じる言葉物語は少女向け小説の作家、高代槇生(35歳)が交通事故によって両親を亡くした姪の田汲朝(15歳)を引き取ってからの同居生活がメイ

棒がいっぽん(感想)_豊かな感受性と幸せのあり方について

「棒がいっぽん」は。1995年7月にマガジンハウスより刊行された6つの短編をまとめた漫画で、作者は高野文子。 どれもとりとめもなくて派手さはないのだけど、確実に心に響くものがある素敵な短編集になっている。 以下、それらのなかから3作品についてのネタバレを含む感想などを。 美しき町夕暮れ時、大浴場から帰宅するサナエは、夕日の高さや時刻を告げるサイレンの音で夫の帰宅時間を予想する。夕食の献立はスーパーで買い揃えるのでなく、いちいち八百屋や魚屋に寄ったりと面倒ではあるものの時間の

あそびあい(感想)_理想像を恋愛対象に押し付けている可能性について

「あそびあい」は2012~2015年に「月刊モーニング・ツー」で連載されていた漫画で、作者は新田章。 恋愛脳で思考が凝り固まることによる相手への干渉や、体だけでなく心も求めることなどを考えさせられる。 以下、ネタバレを含む感想などを。 純情な男と予測不能な女これといった特徴の無いどこかの地方都市に暮らす高校生の男女、小谷ヨーコと山下温之(ハルユキ)を中心に、恋愛と性欲を絡めてパートナーに何を求めるのかが掘り下げられている。 山下はヨーコにベタ惚れしており、告白するもあっさ

恋のツキ(感想)_30歳過ぎて恋愛の延長線上に結婚を考える困難さ

「恋のツキ」は2016~2019年に「月刊モーニング・ツー」で連載されていた漫画で、作者は新田章。 後先を考えずに、運命の出会いともいうべき男の子と浮気をするアラサー女がヒロインなのだけど、失うものも大きいせいか嫌な感じはほとんど無い。 以下、ネタバレを含む感想などを。なお過去にドラマ化もされているらしいが、未視聴なのでそれについては言及しない。 アラサー女の屈託主人公の平ワコは、靴はたいていスニーカー、映画やガシャポンが好きという31歳の女性。以前に勤めていた会社が潰れた

水は海に向かって流れる(感想)_怒っていたことを誰かに知ってもらうこと

「 水は海に向かって流れる」は2018~2020年に「別冊少年マガジン」で連載されていた漫画で、著者は田島列島。 ボーイミーツガールなんだけども親の過ちそのものではなく、その過ちを知ったうえでどう行動するのかということを通して、子どもたちの成長をえがいているところにとても丁寧な印象を受ける作品。 以下はネタバレを含む感想などを。 繊細な心理描写が丁寧に描かれている熊沢直達は高校に近いからということで親元を離れて叔父の住まうシェアハウスに引っ越すことになる。直達は最寄りの駅に