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地域枠と芸術と文化人類学と

044 地域枠と芸術と文化人類学と

概要と感想

 私は、8月28日から30日までの3日間、とある総合病院で地域医療実習を行った。日程は、朝8時からカンファレンスに参加し、1日目は、病棟 訪問診療、2日目は、地域診察・訪問診察・緩和ケア、3日目は、初診外来見学・訪問診療に随行した。K先生にお世話になった。

 1日目の病棟見学では、K先生(こうやって書くと夏目漱石「こころ」みたくなる)に患者さんとの対話における心得を教えて頂いた。1)患者さんの領域、即ちカーテンで区切られた中に入る時にはノックをすること、2)診察するときには患者さんの同意を得ること、3)五感を使って診察すること、4)高齢者と話すときには低い声で耳元で話すこと、5)人生において楽しかったこと、病気について、未来について、という順に会話をすること、などを教わった。私も実際に患者さんとお話した。
 病棟見学の後には、K先生からレクチャーをして頂いた。1)本を1トン読む、2)越境学習、3)人と出会う、というポイントが印象に残った。また、外来診療から世界を考える、というキーワードが引っかかった。
 午後は、訪問診療に同行した。母と同世代の男性の終末期の訪問だった。彼と同級生だという看護師さんも同行した。例えば、50代男性ではなく、友達の親という関係性であったら、彼に対する感情も異なるのではないかと感じた。依然としてよくわからない地域医療だが、ここでヒントを垣間見た気がした。訪問診療でK先生がよく言う言葉に「病院をいいように使ってくださいね」というものがある。この言葉は、(恐らく)初めて聞くのにとても聞きなれたしっくりくる言葉だった。私も、大学をいいように使ったり、医学生を利用したりしている。その感覚で病院も利用する、という感覚がとても肚落ちするものだった。

 2日目は、午前中に「地域診断」を行った。街歩きだ。まさか医学実習で街歩きをするとは思わなかったので、驚きと感動を味わった。私が全学の学生や先生、地域の方と企画している街歩きを医療と絡めてみたいとあれこれ考えていたために、こんなに直接的に繋がるとは思わず、嬉しかった。この地域診断をヒントに企画を考えてみようと思った。情報収集の方法として、個人と地域の対応関係の表が興味深い。例えば、「視診」では、個人;県眼鏡を使って、五感を働かせて問診、地域;五感を働かせて地域を歩く、「聴診」では、個人;聴診器、地域;地域の音や住民の声を聴く、と言った具合だ。大町を実際に歩いてみて、面白い活動をしているひとや場所があって楽しかった。
 懇親会を開いていただいた。K先生、S先生らとお話しする貴重な機会だった。K先生が、芸術や人類学に造詣が深く、さらに私がお世話になっている大好きなまちの人々や大学の他学部の先生をご存じだったのでとても嬉しかった。何より医学系の先生と人文系のお話をしたのが初めてだったので、感動した。学生や先生方の中にも自分と似た趣味嗜好をもった方を見つけられたらいい。仲間を見つけることって大切だと思う。翌日にK先生が話題に出た人類学者の本(急に具合が悪くなる, 宮野真生子、磯野真穂著)を持ってきてくれた。少し読んで面白かったので、手に入れて読むつもりだ。

 3日目も同様、カンファレンスから参加した。ポケモンのスクラブを着ている先生がいて、私もアルクマのアップリケを付けようと思った。軽く調べたところ、存在しなさそうなので作ろうかとも思っている。実際に作るかはわからないが。この日は、外来を見学した。とある男性の患者さんの姿が記憶に残っている。痩せてしまって、余命もあとわずか、というのに、堂々と自分がどのように生活したいのか意見を述べていた。恰も学生が卒業に向けて将来を語るかのようであった。また、食事ができていないことを伝えており、ここ数日の経験からも人は食事が摂れていないと本当に死に近づいていくのだと感じた。ちょうど一年前に行った病院実習で出会った先生が栄養指導もできる方で、ここでもまた食事の重要性を認識した。

今後について

 最近は、海外に行ったり、留学生と交流したりすることが多く、世界の広がりを感じている。だからこそ、地域枠のN県9年間の勤務の縛りに疑問を感じてもいる。1日目にK先生が仰っていたように、外来診療から世界を考える、ということを身に染みて共感する。でもそれは海外や広い世界を知ってこそ考えられるのではないか。文献だけでは得られない経験をしておくべきではないかと思う。少子高齢化が進み激動時代となる今日、総合診療や家庭医療においてもN県で先進的な考え方や技術を身に付けた人材が必要になるはずだ。N県は医師を県内にとどめるよりも最先端の地域医療導入に力を入れるべきではないか。海外大学との交流や留学の機会など。私の情報不足で、既にその動きがあるのかもしれないが。その文脈で、私は学部生のうちに所属大学との協定校へ留学をしたいと考えているため、英語の学習に力を入れたい。また、国内・海外の地域医療の実態を見るべくオンラインなども利用して、技術や情報、考え方について学び議論する機会を探し、或いはその機会をつくりたい。
 また、まちあるきの企画を10月に実施し、K先生から学んだ手法を実際に試してみたいと思う。個人でもまちのあちこちを歩いてまちの人と仲良くなりたい。事前のアンケートで特技・趣味に、まちの人と仲良くなること、と書いたらS先生がいいね!と言ってくださったのであちこちを放浪したい。そこで出会った人たちに様々な価値観を教えてもらいたい。本を読む時間をとれるようにしたい。読書会を開こうと企画中なのでそこを利用して読めるといい。医学だけでない教養も医療に通じると感じる。
この病院でたくさんのことを教わった。レベルアップしてまた訪れたい。

09/03, 2023 日曜日

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