羊水検査を受けた日のこと
羊水検査を受けるかどうか、もし受けて、赤ちゃんに問題があるとわかったらどうするか。
悩みに悩んで、noteにも書いて、2つ記事を投稿したけれど、結局、受けてきた。
出生前診断は良くないと思っていたわたしが、羊水検査を受けることにした理由はいくつかある。
日本ではそんな検査はないのかもしれないけれど、血液検査でダウン症のリスクを調べられ、1/8という高い確率が出たこと。
その後の定期検診でのエコー検査の結果、赤ちゃんが標準より小さく、足が短かったこと。
その二つの理由から、ダウン症が疑われるから、羊水検査を受けるべき、とお医者さんから強く勧められたこと。
羊水検査を受けて、もし問題があるとわかったとき、きっと堕すことを勧めてくるだろうお医者さんと戦うのが怖くて、受けたくなかった。
早くしないと堕ろせなくなるギリギリの週数なので、お医者さんにせっつかれるだろうと思ったし、
わたしは急かされると簡単にパニックになるので、そこで自分の意思を貫いて、産みますと言い続けられる自信がなかった。
でも、旦那さんと話し合って、このままずっと不安なままでいるより、安心のために受けようと決めた。
もし問題が見つかっても、無理やり堕させないこと、問題が見つかった場合には、あくまでも出産までに心の準備をするため、と旦那さんに約束してもらい、羊水検査を受けることを決意した。
でも、旦那さんは、「君の気持ちはわかってる、もうお腹の中にずっといて可愛い我が子なんだよね。知的障害があっても産んでいい。でも、もし身体に重い病気があって、生まれても長く生きられなかったり、ずっと治療をし続けなきゃいけないなら、早めに天国の神様のところへ送ってあげたほうがいいと思う」と言った。
それを聞いてから、問題があると言われたときに、それでも産むことは、ただのわたしのエゴなのではないか、本当に赤ちゃんの幸せを考えたときに正しい選択はどっちなのか、だんだんわからなくなった。
昔、テレビのドキュメンタリーかなんかで、生まれつき重い病気を患っていて、ずっと病院でしか生活したことがなく、小学生くらいで亡くなってしまう子を見たことがあった気がする。
痛くて辛い治療を受け続けて、美味しいものを食べることもできず、遊園地に行くこともなく、病室にずっといるだけの短い一生を送らせることになるなら、産まないほうがいいのか。
でも、もし、治療を受けて治る可能性があるとしたら?その可能性を試さずに、天国へ送ってしまっていいのか。
ぐるぐるぐるぐる、ずっと1人で考えていた。
勝手にわたし1人の悩みのように思って、抱えていたけれど、ある時、旦那さんもわたしと同じくらい、赤ちゃんのことが心配で、不安でたまらないのだと気がついた。
食いしん坊のわたしが、いつものように、何か美味しいものを食べにいきたいな、と旦那さんにおねだりしたとき、旦那さんは、「今はそんな気持ちになれない」と暗い顔で呟いた。
それから、何度も、わたしのお腹をさすりながら、「全然似てない顔にならないでね」(ダウン症だと独特の顔立ちになるため)と赤ちゃんに声をかけていた。
わたしはそれを聞いているのがとても辛かったけど、「そんなこと言わないで」と旦那さんに伝えることはしなかった。
旦那さんに悪気がないことも、本気で心配していることも、わかっていたからだろうか。
後日、旦那さんに仕事の休みを取ってもらい、普段通っている病院から紹介された、台湾で1番羊水検査の腕がよく、権威とされている先生のところへ2人で行った。
たくさんの妊婦さんとその家族で、待合室の椅子が足りないほど混み合っていて、受付をするだけでも1時間以上待たされた。
わたしは羊水検査のリスクなんて、今の医療技術なら心配することはないはず、と大して気にしていないつもりだったけど、当日になると急に怖くて不安でたまらなくなった。
羊水検査を受けたことがきっかけでこの子に何かあったら、ものすごく後悔するし、羊水検査を勧めたお医者さんを恨むし、でもそんなことをしたってもう元には戻せないんだ、とネガティブなことを考え始めて止まらなくなってしまった。
よく旦那さんが怒り出さずに耐えてくれたな、と思うほど、何度も、何度も、診察室に呼ばれるまで、しつこく「やっぱり受けるのやめる。嫌だ。怖い。受けたくない。帰ろう」と旦那さんに甘えて不安をぶつけ続けた。
羊水検査が始まるギリギリまで、旦那さんに手を握ってもらい、自分を落ち着かせるように深呼吸を何度もした。
看護師さんたちはみんな対応がよく、そんなわたしを見て、「緊張しなくて大丈夫よ」と優しく声をかけてくれた。
まずエコー検査をされて、エコー写真をもらって、それから羊水検査を受ける別な部屋に通された。
後から入ってきたお医者さんがキリスト教徒のように両手を組み、わたしのお腹の横で神様に祈るのを見て、さらに緊張が増す。
看護師さんが、「怖かったら目をつぶっていていいですよ」と言ってくれるが、横になっているから、何も見えない。
いつ始まるのかもよくわからないまま、お医者さんがエコーでお腹を見ている、と思ったら、いきなりお腹から股にかけてビリビリと痺れるような痛みがきた。
えっ、旦那さんが全然痛くないらしいよって言ってたのに、痛いんですけど。
羊水検査を受けた人のnoteに、体液を吸い取られている感覚がしたって書いてあったけど、よくわからないな。
看護師さんが慣れた様子で、いつものセリフ、という感じで、エコーを指して、「赤ちゃんと針が近く見えるけど、実際は遠いから安心してください」と説明する。
こっち見なくていいから、そんな説明いらないから、喋らないで集中して!とヤキモキするわたし。
ビリビリする痛みというか、衝撃のようなものを感じているうちに終わり、まだそれを引きずりながら、待合室へ戻った。
普通の生活をしていいです、でも激しい運動は控えて、と説明する中で、看護師さんが何度も、「うちへ帰ったらシャワーを浴びて」と繰り返すので不思議に思っていたけど、消毒液でお腹が真っ黄色のままで、ああそれでシャワーと連呼していたのかと納得する。
待合室で旦那さんに「痛くなかったでしょ。あっという間に終わったでしょ」と言われ、「痛かったよ!」と文句混じりに返すと、旦那さんは少しびっくりしていた。
旦那さんにずっと気になっていたお店のピザを買ってもらって、手を繋いでゆっくり家へ帰った。
旦那さんがプラス料金(2000元、約6000円)を払って、通常なら結果が分かるまでに10日くらいかかるのを、3日でわかるスピード検査をお願いしていたので、すぐに結果がショートメールで届いた。
異常なし。正常。
つまり、ダウン症ではなかった、とのことだった。
台湾の家族と日本の家族の両方に結果を伝える。
日本の家族とはLINE電話で久しぶりに話した。
お姉ちゃん夫婦も、ずっと心配してくれていたそうで、自分のことのように、ほっとした、本当に良かった、と言ってくれた。
けれど、スピード検査では4種類の染色体が正常かどうかがわかるだけで、そのほかの染色体についての結果は2週間後に出ると言われていたので、とりあえずダウン症ではなかったけど、本当に他に問題はないのかが気になっていて、わたしはまだ喜びきれない気持ちでいた。
でも、その夜、旦那さんが仕事から帰ってきて、ベッドの上でよかったねーと言い合ってハグしたら、急にホッとして、子どもみたいに声をあげて泣いた。
そして昨日。
また病院からショートメールが届いた。
全て正常、異常なし。
旦那さんと、お医者さんに足が短いなんて言われてかわいそうに、モデルさんにはなれないかな、なんて冗談を言って、笑い合った。
羊水検査のことで、何リットル泣いたんだろう。
子どもが健康に生まれてくることが当たり前じゃないこと、障害のこと、障害児を育てていくということ。
たくさんたくさん考えた。
まだ妊娠6ヶ月目。
これからも何があるかわからないけど、無事に、健康に、生まれてきてくれますように。
わたしたち夫婦は、子どもは2人ほしいと思っているから、もし2人目を授かれたら、きっとその時はすぐに羊水検査を受けると思う。
色々不安に駆られたり悩む時間を少なくするために。
羊水検査のリスクは低いとはいえ怖いし、2人目を生むときにはわたしは今より歳をとってダウン症のリスクも高まるし、もし問題があると言われたら、またたくさん悩むと思うけど。
羊水検査、出生前診断が、いいものか悪いものか、受けるべきものかどうか、それはすごく難しい。
異常があったら100%堕すつもりで受けるのは、やっぱり否定したくなる。
万が一、異常がわかったら、障害のある子を受け入れる準備が生まれてくる前にできる。そういう気持ちで受けるものであってほしい。
いつか大きくなったこの子に、あなたがお腹にいたとき、お医者さんに小さいと言われて、お母さんとお父さん、すっごく心配したんだよ、なんて話をする日が来ることを夢見ながら、そんなことを考えている。
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