日本人だから、と美味しい二十日大根をもらった
朝、二度寝をはじめた旦那さんのとなりでベッドでごろごろしていたら、お義母さんがわたしを呼びながら部屋にやってきた。
はい、これあげる!と調理前の小さくて、赤くて丸い野菜がたくさん入った透明な袋を渡される。
え、なぜわざわざ部屋に???というかこれ何???と戸惑いつつ、受け取る。
阿姨(おばさん)があなたにって。これ、日本の野菜なんでしょう?蘿蔔(大根)だって。
近所付き合いの濃い地域で、おばさんと呼んでいる人がたくさんいて、一体どのおばさんのことだかわからないが、聞いたところで大抵誰だかわからないので、とりあえずスルー。
大根ときいて再度よく見てみたら、何のことはない、ふつうの二十日大根(ラディッシュ)だった。
日本の野菜だから日本人にあげよう、ということで、誰かがわたしにくれたらしい。
お義母さんには、わたしが結婚前あんまり料理をしてこなかったことがすでにバレているので、
日本の野菜なんだから調理方法知ってるでしょ、とは言われず、ネットで調べて調理したらいい、と言われた。
受け取った二十日大根をとりあえず机に置いてベッドに戻り、またスマホをいじっていると、だんだんお腹が空いてきた。
旦那さんが目を覚まして、二十日大根を、何これ?と言って手にとる。
わたしが慌てて、それ調理しないと食べられないからね!食べちゃダメだよ、と言うと、
わかってるよ、何なのか見たいだけだよ、と落ち着いた声が返ってくる。
二十日大根の中国語は知らないので、とりあえずお義母さんの言ってたことを繰り返す。
おばさんがくれた大根だよ、日本の野菜だよ。
ふぅん、小さいねと言って、ニンテンドースイッチを出し、いつもの無人島(どうぶつの森)へ行ってしまう。
わたしがお腹空いたなぁ〜とわめいていると、朝ごはん食べてきなよと他人事のように言われる。
まぁ実際、他人事なんだけど。旦那さんはお腹が空かないのだろうか。
わたしが妊婦だからこんなにお腹が空くのか?
旦那さんは休みの日はいつも、昼ごはんができたと呼ばれるまで、絶対にベッドから出ない。
なんと結婚前は、午後に起きて、夜ご飯しか食べなかったという。
それで、お手伝いさんが、旦那さんのことを、あなたと結婚する前は、ほんと寝るのが大好きだったのよーと言っていたのか。
朝ごはんはどうしようかな。昨日切ったキウイを食べちゃおう。
それから、二十日大根を冷蔵庫に閉まったら、わたしの性格上、もうそのまま忘れて放置しかねないので、さっそく何か作ることにする。
スマホで二十日大根を検索する。
サラダのレシピがたくさん出てきて、なんだ生で食べられるのか、と思う。
日本の家族とのLINEグループにも、どうやって食べたらいい?と質問を投げてみる。
返事が来るまで、自分でさらに調べてみる。
卵と炒めるレシピが出てきて、旦那さんに見せて、これを作ったら食べるか?ときくと、うん、と言うのでメニュー決定。
キッチンへ行って二十日大根を洗い、根元と頭のところを切り落として、薄い輪切りにする。
こんなに小さいのに、切り落として捨てちゃっていいのだろうか。食べるところなくなっちゃうんじゃないの。
生で食べれるんなら、と一切れ食べてみると、採れたてなのか、新鮮でみずみずしくて、すっごく美味しい!
切ったそばから、どんどんつまみ食いする人(わたし)がいて、最初に洗ったぶんじゃ足りなくなり、また袋からいくつか出し、洗って輪切りにしていく。
つまみ食いしては、洗って輪切りに、の追いかけっこになった。
だって美味しいんだもん。
たまに大根みたいに辛いのに当たるけど。
こんなに生で美味しいなら、浅漬けにしてみようと思い、新しいビニール袋に切った二十日大根を入れて、ほんだしの昆布味のをかけて、もみもみして冷蔵庫へ。
うまくいくかな、ちょっとほんだしを入れすぎちゃったかも。
さて。卵炒めを作るんだった。
さっき切ったのは全部浅漬けにしちゃったので、またつまみ食いしながら輪切りにしていく。
よくよくレシピを見たらウィンナーを入れることになっていたけど、うちにはないから仕方ない。
ウィンナーがなくても美味しいことを祈る。
小さいフライパンにサラダ油を入れて、レシピ通り、まず二十日大根を炒める。
こんなもんでいいのかな。
火が通ったら、塩胡椒して、溶いた卵を流し入れて、また炒める。
フライパンに卵がこびりついてガビガビになっていく。
これはわたしが悪いのか?油が足りなかったのか?
それともテフロン加工がないとか、そういうフライパンの問題?
一生懸命、ヘラでこそぐようにして炒めているうちに、卵に火が通ったので完成。
こびりついたぶんの卵がもったいないなぁと思いつつ、お皿に盛る。
箸でつまんで食べてみると、塩加減もちょうどよくて、おいしい!
お義母さんにも成功したよ、と味見してもらう。
何度かわたしの失敗作を食べさせられたことのあるお義母さんがおそるおそる食べて、
おいしい!と絶賛してくれた。
こんなに薄く切って食べるのね、わたしはこの野菜使ったことがないから、レシピを調べて作ってもらってよかったわ、と感心している。
無人島に行きっぱなしの旦那さんに食べさせるため、部屋に持っていく。
旦那さんは一口食べて、「蠻好吃(マンハオツー)」と一言。
蠻好吃というのは很好吃(とても美味しい)より、ちょっと下なので、がっかり。
日本語にすると、まぁまぁおいしい、くらいだろうか。
でもそう言ったわりには箸の進みが早く、わたしがあーんと口をあけても入れてくれずに、バクバク食べている。
なんだ、美味しいんじゃん。
なんで很好吃じゃないの、ときくと、俺の蠻好吃は普通の人の很好吃と同じなんだ、俺は厳しいの、なんてめんどくさいことを言う。
もう。ほんとにわたしは自分のお父さんと似た人と結婚したらしい。
うちのお父さんは、もっと厳しいよ、おいしいとき、「まぁ、食べれるな(可以吃)」って言うんだよ、と教えると、
かっこいいね!って旦那さんは笑っている。
作る側からすると、やっぱりふつうに、美味しい!って言ってもらいたいなあ。
家族のLINEに、お父さんから二十日大根のレシピがたくさん載ったURLと、お姉ちゃんから生春巻きに入れると綺麗だよ、とメッセージが送られてきた。
よし、余った二十日大根で、生春巻きに挑戦だ!
今度は旦那さんの很好吃が出ますように。
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