見出し画像

読書記録#01 AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子さんの【AI vs. 教科書が読めない子どもたち】を読んでみた。AIに関する知識が人並み以下の私を見かねて、これからやってくる近い将来を生き抜くために知っていて損はないだろう、と先輩が紹介してくれたので読んでみることにした。

「AIが神になる」「AIが人類を滅ぼす」「シンギュラリティが到来する」巷で噂れるこれらのことは、本当に起きうる未来なのだろうか。この本での答えは『NO』である。AIやAIを搭載したロボットが人間の仕事全てを肩代わりする未来はやってこないのだと言う。「全て」とまでは言わなくても、AIが代わりに仕事をする未来は近々来るんだと漠然に考えていた私は驚いた。「あ、こないんだ。人間がやっぱり必要ってことね!」安易にそう考えたが、読み進めていくと、そういう単純なことではどうもないらしい。

そもそも、AIとは何か。AIはコンピュータであり、計算機である。つまり、数式に表すことのできるもの、計算によって解を出せるものにしか対応できないものなのだ。と言うことは、人間の仕事や活動を、全てAIにお願いしようとするのなら、全ての動作、ルール、感情を数式で表現する必要があるのだ。ここを理解するだけで、人間の全ての仕事がAIに代替されない理由がわかる。

しかし、重要なのは、逆の見方をすると、AIにとって数式に表すことのできるものや、正確に覚えたり計算することは、かなり得意であるという点である。現代の日本の中高生は、「表層的な知識は豊富」と言われている。これは英単語や世界史の年表、数学の計算などを、ただ暗記していることを指す。先にも述べたが、正確に覚えること、決められた計算式を正しく計算することはAIも得意なのだ。しかも、その精度は人間を遥かに超える。現代の中高生が、「表層的な知識は豊富」と言われる所以は、教科書程度の文章の意味を正確に理解できないことを指しているのだ。これは実はAIも苦手としている分野である。ん...?これは現代の中高生の傾向が、AIと似ていると言えるのではないか?とすると、AIにできない仕事を、AIに仕事を奪われた人が果たしてできるのだろうか...。AIでは対処できないことは、多くの人間にとっても苦手なことではないのか。そうもすると、AIが人間の一部の仕事を代替する代わりに、新しくできるであろう仕事は、AIに仕事を奪われた人ができるはずがないのである。えええええ。怖すぎません????この本では、「人手不足なのに失業者が増える」と予想している。そんな未来を打破するために、我々に求められている能力とは何か。

それはずばり、「意味を理解する能力」。AIの弱点は「万個教えられて1を学ぶこと」「応用が効かない」「柔軟性がない」「決められたフレームの中でしか計算処理ができない」「意味を理解できない」こと。一番初めに述べたが、AIは計算機でしかない。現時点では、「意味」を記述する方法がないのだ。裏を返せば、「1を聞いて10を知る能力や応用力」「柔軟性」「フレームに囚われない発想力」が人間には必要であり、この能力があれば、AIを恐る必要はなくなるということになる。「何を意味しているのか」「どんなリスクを含んでいるのか」など、ありふれている情報の持つ真の意味を理解できる人材が求められる時代がきているのだ。この点において、読解能力は必要不可欠な能力と言える。「どうして」「なんで」と物事に疑問を持ち、どうやったら解決できるか、どんなビジネスがあればさらに世の中が良くなるかなど考え続けることをやめないこと。これができたら人間はAIと共存することができ、効率よく生産性を高めることのできる、豊かな社会を求めることができるだろう。

AIを漠然と怖がる必要のないことを知り、安心感を覚えるとともに、現代の若者に足りていない能力やこれから意識して身に付けていきたい力を知ることができたと感じる。真の意味を捉えたり、冷静に物事を判断するためにも、判断力の材料を蓄える(勉強を続けていく)ことの必要性を改めて痛感した1冊だった。

#読書  #読書感想文

この記事が参加している募集

#読書感想文

192,370件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?