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鳥見ハイキング<I公園編>2/4話 2022年6月 ミソサザイは風穴がお好き。

    先日、鳥見仲間で茶飲み友達のモカさんとI公園へ行ってきました。

 公園と言っても、歩けばほとんど登山です。
 モカさんは森の中にいる鳥をどんどん見つけて私をうらやましがらせました。

 森の中をパタタと羽ばたく影を見つけました。
 モカさんも気がついたようです。

 白っぽい木の幹に小鳥が数羽いたようでした。
 かろうじて撮れた写真はピンボケでしたが、小鳥の特徴的な黒いネクタイ模様は目に焼き付けました。
 この鳥はシジュウカラです。

 モカさんは上を指し
 「巣がある」
 「枝の分かれているところに、小枝がたくさん集まっているから、巣だと思う」
 そう教えてくれたのですが、枝の分かれている木ばかりで、どれなのかさっぱり……。

 鳥を探しながら歩いたので、後から来た人に抜かれました。
 その人は公園内に詳しくて平坦なルートと山道だけど近道コースを教えてくれました。
 「早歩きでよければ案内するけど?」
 こうに申し出てくれたのですが、私たちは歩くのが目当てではなかったので
 「鳥を見に来ているので……」
 ありがたいと思いつつ、辞退しました。

 少し進んだところでモカさんが
 「ミソサザイ」
 そう言って足を止めました。

 チリチリチリ ピピピ コロロロロロ

 高い音程で、複雑に鳴いているのはミソサザイに違いありません。
 早くもモカさんはミソサザイを見つけて撮影を始めました。
 私も同じ方向にミソサザイを見つけました。

 モカさんに「私も見つけたよ」という意味のつもりで
 「今、左を向いている……後ろを向いた」
 私が見えているミソサザイを実況で伝えたら
 「うん?」
 いぶかしげな返答が帰ってきました。
 「もしかして、2羽、いる?」
 「えっ?」

ミソサザイ

 モカさんのカメラの方向は、私が見ているのとほとんど同じです。
 近くに2羽いたのだとしたら、オスとメスのつがいだったのかもしれません。

 少し歩くと、またミソサザイを見つけました。
 ミソサザイは岩に生えたコケをくわえて、飛び去りました。
 どうやらコケは巣材のようです。

 ミソサザイが飛び去った方向には、「V」字型に切り立った岩壁がありました。
 遊歩道からV字の内側は見えませんでしたが
 「きっとここにミソサザイの巣があるね」
 こう言い合いました。

 さらに先に進むと急峻な山道になりました。
 木材を使って階段を作ってあったと思われる面影はありましたが、長年の風雨に土が流されてしまって、木材だけ残っている様子が、陸上のハードル競技みたいでした。
 「かえって歩きにくいね……」

 木製ハードルの山道を登ると、次は谷に降りる岩の階段でした。
 岩の階段の手前は広場になっていて、ベンチがいくつかあり、休憩できるようになっていました。

 「あぁっ!」
 モカさんが驚きの声を上げました。
 「ここだけ空気が違う!」
 そこだけ空気がひんやりしていたのです。

 モカさんは周囲に目をやって、近くの岩の隙間に手をかざしました。
 「ここに手を当ててみて」
 言われたとおりにすると、岩の隙間から冷たい空気が出ていました。

 火山の岩がいくつも積み重なっていて、中に空洞があるのでしょうか。
 冷えた空気が惜しげもなく出ていて、まるでクーラーとしか思えません。

 「名前の無い風穴でもこんなに涼しいなんて」
 「風穴って名前のあるところはどれだけ涼しいんだろ」
 モカさん嬉しそうに続けました。
 「最高気温が40度っていう日に、こんなに涼しいなんて」

 せっかくなので、ベンチに腰掛けて、天然のクーラーを楽しんできました。

3につづく。

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