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鳥見ハイキング2<ミソサザイ編>

     先日、A山へ鳥見に行ってきました。

 鳥見仲間で茶飲み友達のモカさんと滝まで行ってみようと話し、案内板の示す方向へ歩みを進めたのでした。

 崖に3つくらい段差があって、細い滝になって流れていました。
 前日が雨だったせいか、けっこうな水量があります。

 せっかく来たので、滝の写真も撮りました。

 モカさんと一緒の位置から撮るとほぼ同じ写真になってしまうので、うんと左に行ったり、見上げるアングルで撮ってみたり。

 そんな私の様子を見てモカさんが
 「カメラの液晶を使えば良いのに」
 そう言って滝壺の近くに降りていきました。

 カメラの後ろに付いている液晶が回転するので、その気になれば地面近くから見上げる写真が撮れるのです。

 モカさんがローアングルで写真を撮っていると、突然、小鳥が警戒の鳴き声をあげました。

 「えっ、何?」
 私がモカさんに聞くと
 「ビックリした」
 こう言いながら滝壺からあがってきました。
    続けたセリフに私もビックリしました。
 「ミソサザイの巣を見つけちゃったかも」

 モカさんが言うには、ミソサザイが警戒の声をあげた後、そのまま巣にヒョコッと入ってしまったのだそうです。

 さらにモカさんはこう言いました。
 「ここで待っていればミソサザイが撮れるかも」
 「なるほど?」

 私たちは待ちました。
 ミソサザイは警戒してしまったようで戻ってきません。
 ちょうどお昼の時間になったので、お弁当を食べることにしました。
 少し離れていればまた戻ってくるでしょう。

 その予感は当たりました。
 お昼を食べて戻ってきた私たちの目の前をミソサザイが飛びました。

 モカさんがさらに
 「そこのベンチに座って待とうか」
 こう提案してきました。

 滝がよく見える位置にベンチが置いてあったのです。
 モカさんはさっさと移動して座り、私はこんな巣の近くに座って大丈夫なのかとヒヤヒヤしながら腰掛けたのでした。
 これはモカさんの目論見があたり、ミソサザイは椅子に座って動かない人間に興味を示さなかったのでした。

 ミソサザイは右の方向へ飛んで枯れ草を持ってきたり、左の方向に飛んで苔を持ってきたりしました。
 巣の中に枯れ草と苔を敷き詰めているようです。
 時々、木の根の上に立って、コロロロロと歌いました。

歌うミソサザイ。

 「なんでミソサザイはさえずるのかね」
 「もう巣を作っているのに」
 「巣を作ってからメスを呼ぶの?」
 モカさんがそんなことを言い出しました。

 鳥はメスを呼ぶためにさえずります。
 つがいになってから巣を作ることが多いです。
 モカさんの疑問はごもっとも、でした。

 私が
 「ミソサザイは一夫多妻制で、奥さんが4人くらいいるんだよ」
 こう教えると、モカさんは黙り込んでしまいました。

 ミソサザイの株がモカさんの中で下がってしまったのかもしれません。
    小さなミソサザイが、生き残り、子孫を残すために、一番良いと選んだのが一夫多妻制というだけなので、ミソサザイが悪いのではないのです。

 滝のそばはけっこう冷えます。
 体が冷え切った頃に、ミソサザイの撮影を終了しました。

ミソサザイの巣。

 「やっぱりミソサザイ天国だった」
 こう、言い合いながら、下山することにしました。

(キビタキ編に続く)



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