見出し画像

君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」を観てきた。
以前鑑賞した娘は「んー、あれは宮崎駿さんにしかわからない」と言い、長男は「ジブリ作品としてみれば面白いんだけど、やっぱりわからないところは多い」と言っていた。
私も正直言って、細かい部分は理解不能だった。でも、細かい表現が面白く、ジブリ映画定番のお料理シーンにも引き付けられた。

明治生まれの祖父が母に勧めた「君たちはどう生きるか」

原本の「君たちはどう生きるか」は1937年に出版された吉野源三郎による小説である。
1937年といえば、日本が軍国主義に傾斜し始めていった時代だ。そのころ、「どう生きるのか」を少年に問う内容の本が出版され、ひろく読まれたのは驚きだ。
この本を明治生まれたの母方の祖父は、幼いころの母に強く読むことを勧めたという。(結局、母は読まなかったというが・・・)
私は漫画版ではじめて読んで感動した。
コペル君が

人間は集まるといいところもあるが、みんなでひとつの大きなかたまりになって肩を寄せ合っているせいで、かえって抜け出せなくなるときもあるかも」

と気づくところが真実をついているし、戦争状況が悪化しつつも、「みんなで抜け出せなくなっていく」日本のその後の状況を予言しているような発言であると感じた。
何度も書いてしまうが、この書が出版されて8年後に日本は破滅的な終戦を迎えてしまうということが恐ろしいのだ。
たった数年で体制が変わってしまうという止められない流れが歴史には存在するということが恐ろしい。

落ちてきた家とは何か

父親の再婚相手、母親の妹の実家はなんだか恐ろしい場所だ。
裏庭に得体の知れない大きな家。
勉強をしすぎて気がおかしくなった大叔父が吸い込まれて出てこなくなったという家。

アオサギもそこに住みついている。
そこに入ると出てこられない別世界。
死の世界を表現しているのか?
よく理解できなかった・・・・。

しかし、その家は「御一新のときに突然空から落ちてきた」という。
それは、よく歴史の授業で、「日本の明治維新後は上からの近代化であって」と習う、例の、一般庶民のあずかり知らぬところで欧米化が押し進められたことを表現しているのかもしれない感じた。

日本の近代化がいつの間にか、一般庶民の意思に関係なく行われて、密かに庶民を包み込んでしまった不気味さを表現しているのか?

そして、「私のあとを継ぐ」とは何なのか?

木っ端みじんになった世界は何なのか?

木っ端みじんになった世界は旧体制の日本そのものなのか?

結局多くのメタファーがありすぎて、理解が追い付かなかった。

なんかよくわからない感動

でも、この映画を見て
「観なければよかった」と思う人はほとんどいないだろう。

なんかよくわからないけれど、いい時間を過ごせたな、と満足するのだ。
それがジブリ映画の真骨頂。

このよくわからなさこそが、「生きる」ことそのものなのかもしれない。

よくわからんけど、とにかく進む。
今、を理解しようとする。
でも、理解できない。
まあ、とにかく生きていく。

主人公は力強く変化したから、
観ている私たちも強く変化していき、
新しい世界をつくるんだぞ

みたいな感想を持つ人が多いのではないかな。

誰からからこの映画の感想を求められたら
私も長男と長女の感想と同じ
「よくわからなかったけど、ま、おもしろかった」
と答えておこう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?