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トリミング

この世はトリミングで出来ている。わたしたちは何かしらの情報の一片しか知らない。そしてその知り得た情報をさらにトリミングして人に伝える。
体験談も然り、体験した全てを正確に伝えることは事実上不可能だ。

ヒトは都合の良い風にトリミングをするし、都合の悪いことはトリミングで隠してしまう。このトリミングという手法はいつから生まれたのだろう。言葉が出来たとき、文字ができたとき、いや、それ以前に石器時代にも石をトリミングして道具を作っている。そもそもわたしたちは両親のトリミングの一片を合成し、さらにトリミングすることでこの世に生を享けている。どの情報が正しいのか間違いなのかは知る由もない。

写真には「撮る」という動詞がつく。
「撮る」の語源は「つまみとる」という意味らしい。なるほど、情景をつまみとるのか、と納得した。漢字とは素晴らしいモノだと再認識する一方で、皮肉だとも感じた。

いきなりだが少しぼくの話を。
昨年、今年とロゴの部門にてアワードに入選をしている。学生の時から数えると9つの受賞・入賞歴がある。クレジット泥棒等をされたモノを含めて良いのなら21つある。
実はアワードに作品を出す意味を2014年くらいから見出せなくなり5年ほど出すことをやめていた。しかし去年からまた出すことに意味を見つけた。それに伴い出し方も通常のアワードに出展する工夫とは少し違う工夫を施した。

その工夫とは、アワードを利用する方法である。アワードの入選の仕方はもうなんとなくだがわかっている。これから先、このアワードをどう利用していくかを考えた。本来ならクリエイターとしてのステータスになる受賞歴だが、もうひとつ価値を見出した。これから先何度も同じアワードを取り続けていくことだろう。ステータスとしては残るが、あまりに取り過ぎると逆に価値が下がるのでは無いか。そこでアワードで自分を武装していくことを考えついた。

今回のアワードでロゴデザインにおける武装はひとまず仮完成した。ここでの武装という言葉の内容は以下のものである。

・シンボルマークのみ
・ロゴタイプのみ
・シンボル+ロゴタイプ
・シンボル型ロゴタイプ

ロゴデザインはおよそこのジャンルに振り分けられると思っており、とりあえず世に出せるものでこれら全ては仮制覇した。最高賞には及んでいないのでここではまだ仮としている。

ぼくのなかで、これらのカードが揃ったことによりクライアントさまにどのようなロゴでもクオリティを担保できるという説得材料を持ち得たことになると自負している。

さらに今年はデザイン以外の分野のアワードも入選を果たした。それは日本ではなく海外の写真のアワードだ。ここでもぼくは布石を打っている。今回取ったカテゴリーはファインアートの部門だ。

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ここで何を示したかというと素材や題材が無くとも独自に絵を作り出せる、ということを示した。
誰もこの写真が「古びた商業施設の一角に備え付けられた小さな人工の池に映る小汚いビル」だとは思わないだろう。今回の題材でもある「トリミング」はクリエイターであれば必須の能力だ。この写真では普段意識されることのないトリミングの技量を示すひとつのカードになる。

少し自慢のように聞こえたかもしれないが今ぼくはこのようにアワードを自分のパラメータがわりに使っている。ロゴや今回の写真の他にもヴィジュアルアイデンティティ、ポスターでも取っている。

そしてここで留意する点は、自分は何も偉くなったわけではない、ということ。
アワードに選出されるとたしかに人に自慢したくなるが、それはクライアントさまがご依頼してくれたモノがたまたま良かっただけだということ。アワードを取っていなくとも素晴らしいクリエイティブは山ほどある。今回はたまたまアワードに向いていた、ただそれだけだ。自分の力ではない。

アワードはグリコのオマケと似ている。
オマケばかり集めるコレクターもいるだろう。だが、キャラメルをクライアントさまと味わいながら眺めるオマケはもっと良いものだ。
間違ってはいけない。
本質はキャラメル。
オマケはあくまでも「オマケ」なのだから。

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