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義理の祖父が死んだ②

おじいちゃん(義理の祖父)の通夜が行われた。

通夜の買い出しに行くとき、親戚に
「チリカスちゃんって、ペーパードライバーなの?これから赤ちゃん生まれるんだからしっかりしなきゃ」
と怒られた。
あたしと夫は互いが考えていることを察知したが、その場では流した。

通夜の会場で、みんなでお酒を飲んでおじいちゃんのアルバムをめくった。みんなの思い出を話で、おじいちゃんがどんな人かを知った。おじいちゃんはかっこよくて、ハチャメチャで、偉大で、もっと会っておけばよかったと思った。

おじさん(夫のオトンの兄)は冷静に見えた。
おばあちゃん(義理の祖母)は
「みんなの前では泣かないようにと思ってたんだけどね」
と静かに涙を流した。

寝る前、夫のオトン(義父)は棺桶にしがみつき、泣きながらおじいちゃんに話しかけていた。夫のオトンはいつも冷静なのにひょうきんで、すごくしっかりした人だった。親の死というのは、こんなにも人をめちゃくちゃにするのだと感じた。
夫はやっと実感がわいたようで、あふれてきた涙を指で拭って、拭って、鼻をすすった。これが初めて見る夫の涙だった。

翌日、みんなでお葬式の準備をてきぱきと進めた。遠い親戚が葬儀会場に到着し、挨拶を交わした。おばあちゃんも、夫のオトンも、おじさんも、みんなもっと悲しんで良いのに、すごく真面目に、丁寧に人をおもてなししていて、一番悲しい人が、そんなに頑張らなくても良いじゃんって思ってイライラして泣いた。

坊主が到着して、よくわからないお経を唱えた。参列者に一礼、坊主に一礼をして焼香をした。遠すぎる親戚以外はみんな泣いていたけど、あたしは坊主のお経の何が偉いんだろうとか考えちゃってた。多分地獄落ちる。

そのあとは火葬場に行ったり、今後の手続きの話を聞いたりして、長い長い1日が終わった。
この日、夫はたくさん泣いていた。
その隣であたしは、坊主ってそんな偉い?とか、葬式ビジネス気色悪いとか、そんなことばかり考えていた。(帰りの車でその話をしたら夫に怒られた)

夫を支えたいとか、夫に何かしてあげたいとか思っていたくせに、あたしは色々と腐っていて、何の役にも立たなかった。

おじいちゃんが亡くなって数日、夫は忌引きで会社を休んだ。
のんびりゲームをしている夫はすごく普通に見えたから安心した。

「ねえ、ちょっと話していい?」
「なんや」
「あたし、やっぱ赤ちゃん無理かも」
「え?」
「やっぱりあたしが育てるのは現実的じゃないし、あたしに似た赤ちゃんとか可哀そうだし・・・」
あたしは産めない理由をヒステリックに列挙した。
夫は勘弁してくれよって顔をしていた。
「こっちはじいちゃん死んだばっかで、まだ頭めちゃくちゃやねん」
「ごめん」
あたしは大泣きをして、産めない理由を数えていた。

この日から、あたし達は喧嘩を続けることになる。
ここに、どうしようもないあたしがお母さんになるか、何者でもないおばさんになるかを綴っていこうと思うから、みんなゆっくり読んでね、優しい気持ちで。


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