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調べ学習の思い出

 ここでは、私が小学校で体験した調べ学習について書いてみます。

 私の小学校の近くには、小さな遺跡がありました。正確にいえば、遺跡としての姿は残っておらず、石器や土器が出土するところだったということです。縄文時代か弥生時代かは思い出せません。

 私がこの遺跡に興味を持ったきっかけは、昼休みに校庭で拾ったキツネのような形の石でした。

 拾った石を小学校の教頭先生に見せに行くと、先生は「これはすごい、矢じりだ。中学校の◯◯先生に見せに行こう。」と私を中学校に連れて行ってくれました。私はその時4年生で、まだ歴史の勉強はしておらず、「矢じり」の意味が分かりませんでしたが、昔の人が作った狩りに使う道具だと教えてもらいました。

 中学校の◯◯先生は、専門は技術家庭科でしたが、考古学に詳しく、遺跡の調査もしていたようです。先生に矢じりを見せると、拾った場所などを聞かれました。一通り話して、貴重なものなら先生に預けることになるのかなと思っていると、持って帰ってよいということでした。とても嬉しかったのを覚えています。

 それから私は、昼休みや休み時間を使って、石拾いをするようになりました。多いときは週に5回毎日、少なくとも1週間に1回は拾っていたと思います。庭や学校園の畑には、石器ではなくても黒曜石(石器の材料になるガラス質の石)がたくさん落ちていました。土を掘ることまではしませんでしたが、おそらく地表の黒曜石は私がほとんど拾ってしまったと思います。

 ある程度調査済みだったからか、石器はなかなか落ちていませんでした。それでも六年生までの間に、4個か5個は拾うことができました。残念ながら初めて拾った矢じりは失くしてしまいましたが、他の矢じりや石器、たくさんの黒曜石は、今でも大切にしています。

 6年生のときに地元について調べ学習をする機会がありましたが、私は迷わず石器のことを調べました。小学校に展示されていた出土品をスケッチして、今では懐かしいOHPで発表しました。

 私は小学生の頃、将来の夢を決められずにいましたが、5年生の頃は、博物館などで働きたいと少し考えていました。しかし、学芸員というのはなるのがとても難しく、人数も少ないのでなるのは難しいと知りました。そこで漠然と、社会科の教員になりたいと思うようになりました。

 その頃は地理より歴史が好きで、大学で歴史を勉強して歴史の先生になろうと思っていました。大学で地理学と出会い、今でも地理に関わる仕事をしていますが、歴史も考古学も好きです。

 今思い返すと、あの時、教頭先生が中学校に連れて行ってくれなかったら、私はそこまで石拾いに夢中にはならなかったと思います。そして、歴史を勉強したいと強く思うこともなかったかもしれません。子どもの関心を引き出せるかどうかは、先生の対応に大きく左右されると思います。あの時の教頭先生と中学校の先生に感謝しています。

 学校で教育に携わっている先生方や、子どもと接する機会のある皆さんは、ぜひ子どもたちの興味や関心を大切にしてあげてください。将来まで影響することはなくても、何かに関心を持って熱心に取り組む経験は、子どもの成長に大きくつながると思います。

 すでにそのことを大切にしてくださっている皆さんには、心から感謝と敬意をこめて、ありがとうございますと伝えたいです。

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