無拍子(26)

【26 誰が居るのかな?そこには】

僕は泣きじゃくっている。

大きな丸い蛸と影で出来ているマントを背をっているセバ教授はマンホールの上にイースカーだった子をそっと置く。

僕は泣きじゃくっている。

イルカの雛のピギーはマンホールの端をトントンココンとスプーンで叩く。

僕は泣きじゃくっている。

次の瞬間、マンホールは裏表になって表が表にやって来た時にはすっかりイースカーだった子の姿は跡形もなく消えていた。

まるで手品のように。

僕とトマトが必死になって開けようとしたあのマンホール。

まるでマジックのように。

イースカーだった子はどこに行ったんだろう?混乱している僕は、こみ上げてくるものを必死にこらえようとして

「彼、は、どうし、て、しまっ、たんです?」セバ教授に聞く

イースカーって名前はどうしても出てこなかった。

もしその名前が出ていたら僕の声は声ではなくなって、言葉は言葉の意味がなくなり、会話は会話の程をなしていなかっただろう。

「ウ、工場に送ったんだよ。ウ、ドルトムント伯爵のね」

「ど、ドルトムント伯爵だって?どうして?」

「ウ、そうか、ウ、君は知らないのか」

ピギーが割って入ってくる

「あなたいい加減に落ち着きなさいよ、ドルトムント伯爵のプールってのは生と死をつかさどる場所なんだよ。ここらにいる生き物はみんな全部例外なく、そこで判別をされるのさ。壊れた人は工場に行くか、死んだ人はプールに行くか、はたまた自分で自分をやめるならニイクラになるのかを、あの場所で決めるんだ。だからあそこには目的をもっていく場所じゃないんです。イースカーは多分工場に行くのだろうね。それで、そこでさ、夢をいっぱい詰めてもらえるだろうねキット。あそこの工場にはイメージの職人人とまで言われるほどの技術者がたくさんいるからね。だからそこへ行ければ壊れた人は何度でもやり直せるの。頑張らなくても誰かが、みんなが救ってくれるんだ」

「じゃあイースカーはプールに行くの?」涙が再びほほと再会する。

イルカの雛のピギーはケラケラ笑う

「なんでさ、イースカーは死んでなんかいないじゃない!ここでの死ぬってのは、羊がやってきて魂を抜いて行ってしまった時。夜なら1番から8番の羊が来るけれど、昼間なら0番の羊がやって来てすっかり魂を抜いていくんだよ。イースカーは魂が抜かれていなかったでしょ」

ダウリンとボンゴレ大陸はふたりしてウンウンうなづいている。

僕の思考はフル回転だ。

「じゃ、じゃあ、イースカーにはドルトムント伯爵のところに行けば会えるのかい?」


パタパタパタパタ音を立ててページが繰り返される。

コマ送りのその絵が動き出す。

目の前に2メートル程あるマグロの頭をした魚屋のドルトムント伯爵と、[近所]という立札のかかったお客さんが会話をしている。

「あの人間人の子は大丈夫よね」

「ああ、全然大丈夫だよ」

「星のいたずらは確かにあったしサナギもに入っていたみたいだけど、あの子がああなったのは雷の木の実を喉に詰まらせて夢と希望を木の実に吸われただけだったからね。工場にでも入れとけば、なんとかなるでしょう」

「なるほど、それはよかった」

コマ送りにのその絵がハラハラと消えた。


僕の両ほほには白い乾いた筋

「なるほど、それはよかった」ってため息のように呟いた。

ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん