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無拍子(4)

【4 スイングしているモンスターにバラの花束は似合わない】

マンホールのフタは凄く凄く重たくて、トマトと2人で必死になったけどピクリとも開かなかった。

どのくらいだろう、長いことそれと格闘していて、よっぽど諦めてしまおうかとトマトと言っていた時

僕の後ろにいたミニチュアダックスのアンズが僕を励ましてくれた。

それは、べろべろと僕の右足の空き缶に少し残ったジュースをなめているかのようにも見えたのだけれども

僕には、ミニチュアダックスのアンズが励ましてくれているようにしか思えなかったんだ。

僕はそう分かったから

「がんばるよ」とミニチュアダックスのアンズに声をかけると、アンズは

「頑張るのはあなたでトマトではないのよ」と、言ってくれた

僕はひとつ

「わかった」って答えると、ミニチュアダックスのアンズは満足そうにウンウンうなづいて座っているトマトのくたびれた足の上にちょこんと座りスゥィングを始めた。

凄く凄く重たいマンホールを持ち上げようと、頑張っていると僕の頭に又マグロの頭をした魚屋のおばさんの顔が浮かんできた。

魚屋のおばさんは

「間違っているのよ」とぶつぶつ言い始めた。

それに

「どう、間違っているの?」と聞きそうになって慌てて口をつぐんだ。

答えは教えては貰えないんだったよね

それは本当に僕の頭に浮かんできただけで声には出してはいないんだけど

魚屋のおばさんは黙っていたけど、おばさんの顔がニカッと笑って(とは言ってもマグロの頭が口を大きく開けただけで本当は笑っていなかったかもしれないんだけどね)

「答えを聞いてはいけないなんてのは、真っ赤な嘘だよ 目的を持ってはいけないのさ」って、そんなような意味のことを僕に教えてくれた。

それを聞いた僕はマンホールのフタを持ち上げてこの中に入りたいっていうのも、目的ってことなんだろうなって思ったとき

ミニチュアダックスのアンズがくるくる回りだし

「またね」って言ってバラの花束を(トマトにあげるのよ)って風に僕によこした。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん