無拍子(21)

【21 大きな雷で出来た木の羊の歌】

2日間の中で雷で出来た大きな木のしてくれた話は、興味深いものが多かった。

物心ついてから色々なもの見てきているという彼(雷で出来た大きな木の名前も、実は僕の脳みそに筆で書かれていたのだけど、とてもじゃないけど覚えきれるものではなかった。それは人々が好きなように彼の名前を呼ぶために、人々が呼ぶように彼の名前が長くなってしまうんだそうだ。その長さたるや昆虫図鑑の全六集くらいあったんだ。僕の脳みそにかけるところが無くなっちゃうくらい長かった。最後の名前のところには[雷で出来た大きな木]って書かれていた)の話の羊の話についての話が特に僕の興味を誘った。

羊たちには1から8ぐらいまで番号がふられている

順番に説明してくれた。

1の羊は、体がとても大きくて筋肉も僕の3倍以上あり額に平べったい2本の角がある。

気性が荒くて必要以上に噛みついたり自慢の角で人間人を突き立てたるんだって言っていた。

2の羊は、1の羊より小さいのだけど、この世のものとは思えない位の怪力で、大人のメドモやジュゲムの魚より力が強いのだと言っていた。

3の羊は、策略家でこの世のすべての生き物の弱点を知っていて小さくてかわいらしいコロロや甘くて酸っぱいタニシなんかも笑いながら傷つける

4の羊は、羊の中でも一番意地が悪くてね。雷で出来た大きな木も、あれに行き会ったら死んだも同然だよって、教えてくれた。

なぜならその羊は生き物全てを凍らせる瞳を持っていて、寝ている人の目をこじ開けては順に凍え死にをさせていくんだって。

5と6と7の羊は、いつも3匹でいて

5の羊が生き物の後ろに回り込んで押さえたら、

6の羊が口を開いて生き物の舌をひっこ抜いて、

7の羊がしたの無くなった口の中に手を突っ込んで魂を引きずりだすんだって

引きずりだされた魂は、きちんと3等分したら塩漬けにして保存食にするんだと言っていた。

8の羊は小さい体なのだが風を自由に操れるらしい。

雷で出来た大きな木もこの羊だけにはあったことがなくて、旅人の歌詞の中に書かれていたのだそうだ。

眠りがやってくる少し前、羊たちに何度か遭遇した雷で出来た大きな木は、それぞれの場面で死を感じたのだという、偶然にもその時々に羊たちは「ふぁそらしど」の街でたらふく獲物狩りをした後だったために、これだけ大きい木を今更相手にしなかったんだという。

ただ唯一4の羊に出会ってしまった時だけは、あの目を一瞬見てしまい体が透き通ってたまに消えてしまう癖がついてしまったのだそうだ。

そうやって8の羊の歌を低音を聞かせた素晴らしい声で聴かせて教えてくれたんだ。

「どの羊が何番だとかってのは、どうやってわかるのかしら?」

僕の質問に大きなあくびをひとつついて、そこら中に雷を落とした後眠そうな声で

「彼らの腕の肩のところにね。大きな丸い印があるんだよ。その丸の中に点が打ち込まれているんだ。その点もテントウムシもどきで出来ているんだけどね。後にも先にもそれを知っているのは、私か[胡椒山椒の木]くらいなものかもしれないね…」

そのまま、雷で出来た大きな木は、大きないびきをかき始めたんだ。眠り続けていたイースカーもビクビクっと体を揺らしたくらいだよ。

雷で出来た大きな木が寝てから、2日程したころ岬のニイクラの墓場の方向から

ズルズルズルズル 何かが引きずられてくるような薄気味の悪い大きな音が聞こえてくる

ズルズルズルズル その音が始まっておおよそ半日たってどんどん音は大きくなっていく、音が止むことはない。

ズルズルズルズル そのまた半日くらいたった頃、暗い奥の方から山のような大きなものがこちらに近づいてくるのを、大きな雷の木の光がぼんやりとうつしだす。

ズルズルズルズル 気味の悪い物音はそれが奏でているようだ。

ズルズルズルズル 目の前に大きな体のナメクジの短い腕の肩の部分に大きな丸い印があって。その丸の中に点が打ち込まれていて。その点もテントウムシもどきが3匹とまっている。

これが羊?羊?慌てる僕は雷で出来た大きな木の3の羊の段を必死に思い返した。

♬3の羊は策略家~

♪生き物のすべての弱いところ~

♫嫌なことを知っている~

♩誰でも彼でも傷つける~

じろりと僕を見つけたその生き物

僕はどうやらピンチだ。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん