無拍子(27)

【27 アンクルの独講演】

僕らはそれから、大きな丸い蛸と黒い影を背負っているセバ教授が作成した星図をもとにしてイルカの雛のピギーの父親のマムシを探しに旅を続けた。

あの事件で風船はダメになってしまったから、セバ教授が懇意にしていた鯉のぼりをうまく利用してね(もちろんあのラクダの徳利を用いて)

ちょっと不思議なお願いの仕方をしていたけど。


僕らは15の様々な都市や街を順に回っていろいろなことをこなしていった。

例えば36日目、3番目に行った[遠そう]という都市では、カメラの顔をした毛玉のニイクラと[自己満足]と[不快感の溝]について深く語り合った。

99日目で12番目の[カツレツ]という街と13番目の[document・入る]という街の間に差し掛かった時、あの蜘蛛たちは再びやって来て、大きな事件を与えてくれた。

彼らは口々に

「最近ご無沙汰だったしね」とか「あの大陸でやったのはいつだっけ」

「そうだっけ」なんて言いながらブルブル体を震わせてやって来た。

そのころ僕は、すっかり夜のことを忘れていて

「夜に来る怖い生き物ってなんだっけ?」イルカの雛のピギーに尋ねたけど。

ピギーはすでに眠っていて、セバ教授に同じよう聞こうとしたけど、おぼろ豆腐の顔はもうひとさじも動かなくなっていた。

僕はその夜をドキドキしながらすごしていた。

前に夜を過ごした時は、雷で出来た大きな木が居てくれたし、何なら二日くらいはずっと話し相手になってくれたもの

僕はこの夜をブルブルしながら待ち構えていた。

不安で不安で仕方がない。

イースカーもトマトもここにはいない。

僕はこの夜をビクビクしながら…。

悪い予感は2日目の夜に。

その夜セバ教授がいきなり立ち上がって(とは言っても、黒い影の教授は暗さに混在していて、白いおぼろ豆腐がすうっと彼のいつもの目線の位置まで上がって行ったので、立ち上がったのだと思ったんだけど)

「[丸星座]を創りたいと大きな丸い蛸に話をしたとき、彼は異常なくらいに反対したんだ。でも私は『冗談やら酔狂ではないんだよ。私は本気でそれを作ってみたいんだ』と彼に熱意を伝えた。彼は最後の最後まで『うん』とは言ってくれなかったのだけれど、いつもの手伝いは最後の最後まで手伝ってくれた。なぜそんなに私が[丸星座]にこだわらなくてはいけなかったのかと言えば、星学は[丸星座]を創らないと、[教授]の称号は与えられないものなのだ。そのために祟られようと呪われようと、そんなこと私にはほんのちっぽけなものだった。私が受けた祟りは[今までの名前を捨てる]って物だった。私は知らなかったんだよ。その祟りが進行性のものだなんて。半分まで進行してきて進行を止めるためには、影のマントと仮面が必要だってのがわかったんだ。それにしても私は、その祟りとうまく付き合ってこれたものだと思う。結局セバの方に[教授]の称号を与えられた時だけは、とても悔しかったけれどね。それでも私の体に[教授]の称号が与えてもらえたのは間違いではないし、いつかはセバともまた一つになれると信じていたんだ。彼との入れ替わりを選べたのは楽しかったしね。外に出るときは星まわりの悪い星の監視があるから必ずセバでいなくてはいけなかったけどね…」そこまで言うとセバ教授の声はスススと暗闇に消えてしまう。

セバ教授のおぼろ豆腐の顔の横に、8番目の羊が音もたてずに立っている。

「連れて行くね」羊の声は抑揚がない

「やめてくれよ」僕は声を振り絞る。8番目の羊の歌を探す。懸命に、頭の中をグルグル探し回る。

「もう一つは、君に託したよ。一度に2人は無理なのさ」羊の声は抑揚がない

そう言って暗闇にすべてが消えていく

ラクダ柄の徳利だけがそこに残されていた。

そのラクダ柄の徳利を抱えて、それからの何日間の夜を僕はすごしたんだけど、イルカの雛のピギーの安らかな寝顔だけが僕の救いだった。

僕はその悲しみを暗闇に収めて乗り切ろうとした。

ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん