鳥獣戯画 5

 
5    カタカナ
 
ご存じのとおり緑山猫は魔法を使うので有名ですが。
その緑山猫の信雄は昨日の晩から私の家に泊まりに来ていた。
「おはよう」信雄が起きた気配を感じて、私はそちらに声をかけてみる。
『んみゃあ』彼はオス猫特有の野太い声を私に放り込んでくる。
「んで、それはそうと君が拾ってきたそれは何だい」
埃まみれの人型ロボットが台所に座っている。
眠そうな目をゆるゆるそちらの方に向け、私へと視線を返すと信雄は
『んみゃぁ』
全然わからない。こいつは何を言っているんだろう。私は彼の言葉に困惑する。
「いやいや君が拾ってきたわけじゃないのかだって?そんなわけない昨日までここにはこんなものは無かったのだから。それに私はこんなものが何処にあったかもしれないんだ。だいたい君を信用して出入り口にカギをしていないのだから、勝手なものまで持ち込まないでくれよ」
信雄は魔法を使うので、こう言っておかないと次から次へとおかしなものを拾ってくる。この間なぞは、食べかけのどんぶりを食べかけているおじさんをどこからか持ってくる始末だ。
目をすっかり閉じた信雄は
『んみゃぁ』
ロボットはその声に反応する。
『カタカナでしゃべる以外ないと思っているのですか?浮かれすぎですよ』
昔見たCMのセリフをしゃべりだす。
まだ平和だった時代。
しかし時代はすべてに平和で、平和ではないと言われる時代が幻想なのかもしれないが。
そのCMはロボット時代全盛期。カタカナというニュアンスは私にはよくわからないのだが、確か教師代わりのロボットが少年を諭しているようなものだったかと思う。記憶があいまいだ。過去の記憶などすべてあいまいなものだけれどね。
すっかり夢の中の信雄をよそに、そのロボットは膝に手を当て
『よっこらしょ』と一声をかけて、頭を下げるとその場を後にしようとする。
「まぁ待ちなよ。今日も雨が降っているしさ。何かの縁だしもう少しここにいたら?」
ロボットはその言葉に驚いている。
記憶がよみがえる。確かあのCMは戦争に行こうとする少年に教師のロボットが引き留めるんだけれど、まさかロボットがそんなことを言うとは思っていない様子の少年に言うセリフだったな。
そこで私は
「カタカナでしゃべる以外ないと思っているのですか?浮かれすぎですよ」
目を丸くするロボットがそこに居る
そうだ彼の名は『peacekey』

猫に振り回される木曜日

ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん