無拍子(32)

【32 星との会話、星との懇談、星の陰謀】

☆を作る試験のために[トウガンの岩]のかたわらに僕はいた。

星を作るにはバナナの蜜を蜘蛛に勧めて、気に入ってもらえなくてはならない。

どちらにしても蜘蛛がやってくるのを僕はひたすらに待たなくてはいけなかったんだ。

夜を彩る蜘蛛たちはなかなかに現れることはなく、夜に住まう蜘蛛たちはぜんぜんやってくることはなかった。

7日か4日たった頃に、あのウルィティング星雲の2番星が僕のもとへズズズッて音を立てて近づいてきてニヤニヤしながら、

『あの風船の中に、居たのは君では無かったんだね』

「僕ではないよ」

『そうだったのか、君によく似て居るようだったからさ。君の友達かなにかだったのかな?』

「まぁね」

『その友達は、どうなってしまったんだい?』

「心が折れてしまったんだよ」

「でも、もうすかっかり良くなってね」

『そうか。それはよかった。ところで君はこんなところで何をしているんだい』

「僕?僕はあの工場に行きたいんだよ」

『なんで工場なんてところに行ききたいんだい』

「仲間に会いたいんだよ」

『あはは、そんなことじゃあ、あそこの工場にはとてもじゃないけど入れないだろうね』

「なんでそんなことを君なんかが言いきれるのさ」

『あそこは昔の知り合いに会いたいだとか、中がどうなっているのかを知りたいだとか、興味がただあるんだ、だとかってのを考えている奴が入れる場所ではないんだよ』

「それでも僕はトマトに会いたいんだ」

「僕の旅の話を聞いてもらいたいんだ」

『聞いてもらってどうするんだい?そのあと工場を出ていくつもりかい?』

「ぼくは、ぼくは」

『それでは君にトマトと話した時の話をしてあげようか?』

「えっ」

『二つ前の夜にね。トマトと話をしたんだ。君の事も聞きたかったし。けれど彼女は君の事は何も教えてくれなかった。君に害がおこるかもしれないって思ったんだろうね。その代わり自分の話でよければって、彼女は話してくれたんだ。トマトがあの工場で働きたがっていたのはね、トマトの家の裏に住んでいた[緑山猫]を彼女が誤って逃がしてしまったからなんだ。ズーっと彼女は笑っていただろう?それはその時の罰なんだ。その罰を償うために、あそこで彼女は働いているんだよ』

僕は彼女からそんな話を聞かされていなかった。

『それにピギーは目的を見失っていたからね。このままだとニイクラになってしまうかも知れなかったから、ピギーは工場に呼ばれたんだろう。本人にその意識はなかったろうけどね。彼女の中に目的が芽生えたら、あそこを出ていくのだろう』

「それなら僕だって、目的が出来上がるまでの間…」

『うん?君にはもうすでに立派な目的があるじゃないか』

「えっ?」

『気が付いていないふりを気が付いている君が知っているんだよ』

『いろんな旅で君は気が付いてね。気づいてしまっているはずなんだ』

「なにを?」

僕は聞いたが星はそこまで言って黙り込み、僕の様子をまた観察し始めた。そんな彼に

「そういえば、僕は君に何かしたのかしら」と聞いてみた。

星は、にっこり笑って

『何もしていないよ』

「じゃあなんで僕を目の敵にするのさ」

『俺は君にとって悪い星回りなんだよ。わかるかい?何かをしたとかしないとかではなくってね、俺は君に災いを呼ぶ星なんだよ。それは誰でも一つくらいは持っているものなのさ』と、照れくさそうに言っていた。

僕はなんだか嫌な気持ちになったので

「では、もう気が済んだのではないかい?大体にして君がこのまま何を言おうとも、僕は一ミリだってここを動かないよ」

すると星はヘラリヘラリ笑い出す

『う~ん。前の世界で君にちょっかいを散々出した時、何もできなかったからなぁ。どうしようかと思っていたんだけれどね。こちらでもあまり手を出せずにいたからなぁ』笑っていた彼は僕の足元を見て物凄く驚いた顔をした。何なら体を震わして何かを恐れている様子。

「ど、どうしたの?」

『君は何を足に、何てものをつけているんだい?』

僕は足にはめている空き缶に目を落とす。その視線に星は再びブルブルと震えだす。

僕は空き缶に手を伸ばす。そのそぶりに星はグルグル目を回す。

『外すわけではないんだろう?ニイクラの様に付けたままにするのだろう?俺にそれを見せるわけではないのだろう?羊がやってくるぞ!』声は上ずって上ずって必死の声の音に変わっていく。

「もちろん外すさ」僕は彼との会話を終わらせたくてスニーカーにすっぽりはまっていた空き缶を外して見せた。

ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん