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無拍子(23)

【23 さようなら さようなら】

風船の中で、はだしの花ペンギンのイースカーは、自分のポシェットをゴソゴソ探っている。

イースカーは、いつか雷で出来た大きな木にもらっていた木の実が入っているのにハッと気付く。

イースカーは雷で出来た大きな木の忠告をすっかり忘れていて、おなかがすいている事をいいことに、その木の実を自分の黄色いくちばしの中にポーンと放り込んだ。

イースカーはくちばしの中でバリバリしている事を物ともせずに、もぐもぐやらかしている。

僕はそこで始めてイースカーの変化に気がついたんだ。

花ペンギンの花は音を立てて枯れ始めると、ペンギンの衣は茶色く濁っていく。

ポロポロとかさぶたが落ちるように花ペンギンのペンギンが消えていく。


すっかり花ペンギンの花が枯れ果てた後、僕と変わらない背格好の子供がそこに座って居たんだ。

その子は、『ぼーっ』と中空を眺めている。

僕らが声をかけてもまるきり反応をしない。

黒い影のセバ教授に

「これはどういう事なんです?」と、質問したんだけどセバ教授も

「ウ、うーん」と腕を組んで唸るばかり

セバ教授でもわからないことがあるんだ。

イースカーだった子の目は、中空を見るでもなく眺めるでもなくゆらゆらとくゆらしている。

それから僕らは、この子についての最前手を探す会議を始まる。

そして、すぐに最前手をみつけだす。

まず、セバ教授の家でイルカの雛のピギーの父親のマムシを探した後で、ドルトムント伯爵のところにイースカーを連れて行こうと言うこと。

そんな話をしている最中に風船はあのニイクラの素晴らしい墓場の上を通過する。(ニイクラたちはすでに全員モニュメントへ帰っていたが、あの煌びやかな光たちは相変わらずのお祭り騒ぎをやっていたよ)

それを越えて、セバ教授の家につくころ風船の中の空気が少し少なくなって、しぼみ始めていた。

なんとか風船はそこまで飛べて、何とかそこにたどり着いた時には、ボンゴレ大陸は待ってましたの顔をして、

『ふふふふふふふf、おかえりなさいi、セバ教授u、っふふふふふうふu』

「ウ、ただいま」とセバ教授は挨拶を返したんだけど…。

その時には、ボンゴレ大陸はその前に現れた大きな丸い蛸との会話に夢中だった。

風船から降りるとすぐに、廃屋のような古びた家は僕らをギョロリと向けてきて、物欲しそうな顔をセバ教授へ向ける。

セバ教授は懐をゴソゴソ探るとその手に出てきた[紫のカギ]を廃屋のような古びた家へ放り投げる。

廃屋のように古びた家は大きな口を開けてそれをうまそうにたいらげる、それを味わって思い出したかのように。

「セバ教授おかえりなさいませ」とドアを大きく開いた。

「ウ、ただいま、ウ、ダウリン」

僕とピギーはセバ教授の後に続いてダウリンの中に入った。

しぼんだ風船の中にはイースカー。

蛸と大陸は世間話に夢中。

「お邪魔します」と声をかけると、ダウリンは

「いらっしゃあい」とほほ笑んでいた。

セバ教授は家に入ってすぐに、先ほどダウリンに食べさせた[紫のカギ]を拾い上げ懐にしまっていった。

家の中に入るとそこは絢爛豪華な内装でした。

外から見た時は廃屋のような古びた家に見えたのにすごいギャップだなって、ピギーに小さい声で伝えた。

「それはね、世にいるすべての人間人といっしょなんだよ」って、ほほ笑んでいた。

玄関を背にして3枚ほどある扉の真ん中をセバ教授は開けて、あのおぼろ豆腐のような顔をしゃくって

「ウ、こちらへいらっしゃい」

連れだってその部屋に入ると、セバ教授は影の部分のすその部分に手をかけて

スルスルと音を立てて脱ぎ捨てる。

影を脱いだセバ教授は、そのコートのような影を椅子の上に放り投げて、おぼろ豆腐の顔をするりと外す。

その顔を見た瞬間には僕の脳みそに[アンクル]と見ごとな素敵な文字を書かれてしまった。

「アンクル?」

セバ教授はニッコリ笑って

「あの姿の時がセバで、この姿はアンクルなのさ」

「イースカーほどではないけど、少々私も祟られていてね」

照れくさそうに言うと買ってきた空色のティーソーサーに、淡い色合いの青色をしたティーカップを置いて、そこに熱いお茶を注いでくれた。

「ところで、君の足のつけているものは、どういった類のものなんだい?」

『ウ、』は付いていなかった。



ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん