無拍子(10)
【10 ドルトムント伯爵 満お持して登場。そしてテレビの謎の解説】
アンズは毛ヅヤが良い事でもでもわかるよう、機嫌もすこぶる良かった
「こないだわ、ご馳走様ね。それとバラの花束をありがとう。とても鮮やかな赤い色になりましたね」
アンズはいつの間にかダイニングテーブルの上に置かれていた花瓶に刺さったバラの花をクンカクンカと鼻を鳴らして嗅いでいた。
何本もの1輪挿しの花瓶が並びだしたのは、そのあとすぐの事だった
僕の目の前の皿の横にもスーッと赤いバラの花瓶が立ち上がった
それを見ていてなんだかマジックショウの様だなと思っていると、後ろに立っていたワンピラポはクックックッと声を押し殺して笑っていた。
他の、たとえばトマトの後ろに立っているワンピラポだとか、アンズの両脇に立っているワンピラポ達も顔の端っこの方に笑いをたたえていて皴のようなものが寄っていた。
その様子にたまらなくなった僕はトマトに
「何か、おかしいかな?」って聞いてみた。
すると、トマトはコロコロ笑いながら
「いいえ、しいて言えばドルトムント伯爵の影響が強いのね」
そういって、さっき出てきた香りのきついデザート[マッカリ](ハリハリのコケでできている)を夢中になって食べていた。
よくわからないなと思っていると、そういえばと思い出しアンズに向かって、あのあちこちにあるテレビについてきてみようと思ったのさ
すると僕の後ろに立っていたワンピラポが本当に小さな声で
「おやめなさい、カジノフォーリーがそんなことを聞いた日には頭の先から食べられてしまうよ」というようなことを教えてくれた。
納得のいかない僕はいつの間にか、あのピラミッドのように積まれたテレビを見るでもなくみていた
見ていると、視点が定まる
テレビの画面の中に頭を突っ込んでいるイノシシがいた。
いいや違う、胴体がイノシシのテレビだ、しかも丸々と太っている。
正確には6匹山のようになっている。
それは何とも不自然でグロテスクな生き物だった
一度目についてしまうと、僕の目はそれにくぎ付けになっていた。
そんな時、僕の隣の椅子の上に稲妻が落ちる
ものすごい音とともに
煙はもうもうとし、その煙より人影があらわになってきた
「おまたせ、わたしがドルトムント伯爵よ」
僕は驚いた
だってそれは、どこからどう見たってさその姿は
あの魚屋のおばさんだったんだ
相変わらず頭はマグロのままだったし、2メートルの大きさも変わることはない
そのドルトムント伯爵を名乗る魚屋のおばさんは
「あの、ニイクラが気になっていたの?」
指をあのテレビに向けて言ってきた。
心を見透かされた僕の声は上ずって、
「はい、そうです」が「ひゃい、ほうです」という風になってしまう
それでも彼女にはちゃんと伝わっていたみたいで
「あれわね、機有人になってしまったのよ」
それから僕は、あのニイクラについてドルトムント伯爵から教えてもらったんだ。
その間、トマトとアンズは、ワンピラポが絶えず運んでくる料理を次から次へと平らげていった。
食べ終わった皿がダイニングテーブルに載りきらなくなった頃、ドルトムント伯爵の話も佳境を迎えていた。
彼女の説明を要約すると
ニイクラってのはもともと別の生き物で、道しるべをテレビに頼りすぎてしまったのだという事だった
自分で考えず他の道しるべを頼った結果があの姿で、地上にいたものも重さを失い雲の上に放置されるようになったのだという事だった。
トマトはおなかをさすっていた
もちろんコロコロ笑っていたよ
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん