『saṃsāra(サンサーラ)』12
12 癪
いつだったか聞いていた話は本当だったようで、山は猫の癇癪によって騒ぎ出す。
猫と山を一度になだめるのは大変で、猫の機嫌を取れば山は不愛想になるし、山をおだてれば猫は口をきかなくなるしまつだ。
慌てて双方に落ち着いてもらうよう説得を繰り返すのだけれども、双方が納得する答えなどすぐに思いつくものではない。
「旦那様。私にはよくわからないのですが、多分これはいつも通りですよ」その言葉に彼女が反応する。
「確かにね。しかしそれじゃきりがない」と、言うのも揉め