6.パラレルワールド

その日は、とても暑い「夏のはじまり」だった。
 
2022年6月25日、SUPER☆GiRLS 3期メンバー加入6周年当日。
いわゆる「ガンダム前」(正式にはダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場、実物大ユニコーンガンダムの立像がある。)で新曲『Summer Lemon』のリリースイベントがあった。
この日は事前にアナウンスがあった通り、リーダーであり新曲センターの阿部夢梨さん(以下、ゆめり)が体調不良により欠席。
主に推しがMCや新曲センター(など、ゆめりのパート)の代打を務める形になっていた。

先に言っておくと、5章スパガを先頭に立って引っ張ってきたゆめりの存在は本当に大きいのだと感じた。
ただの「9-1=8(人)」ではない心細さを感じることもあった。
体調不良ということで、いつ復帰できるのか詳細は分からないが、無理せず、でも早く戻ってきてくれるよう願っている。

その前提はありつつも、私にとっては夢のようなライブでもあった。
代打とはいえ推しがセンターにいたり、いいパートを歌っているということはやはりヲタクとしては嬉しいものだから。
推しは、与えられた全ての役割を立派にやってのけたと思う。
本人はかなりいっぱいいっぱいというか、「次はこれやって…」と考えながらやっていたようだが、その日の推しはしっかりグループを引っ張っていたように思う。頼もしかった。
スパガに加入してからの6周年、推しが積み重ねてきたものが存分に発揮されているのだろうな、と感じた。当時の推しを詳しく知らなくても、誇らしい気持ちだった。

1部では特に『Summer Lemon』の落ちサビ

私と一緒が1番いいってわからせちゃうもん

があまりにも良くて、改めて推しが1番いいとわからせられてしまった…

そして2部、事前に配信で2部のセットリストは推しが決めていることを知っていたので大体の曲は予想がついていた。

1曲目は『Summer Lemon』。
推しがセンターのこの曲はゆめりが復帰したらもう観られない。でも、それでいいと思っているからこそこれが最後だと思って目に焼き付けた。

2曲目は『ラブサマ!!!』。
3期のデビュー曲なので2部では確実にやると思っていた。
この曲と言えばラスサビ前の「抱きしめて」というゆめりのセリフが印象的だが、この日は誰がやるのだろう、やはり推しが言うのだろうか…などと考えていたら、なんと全員で言ったのである。
その瞬間の私は「逃げたなー!(笑)」と思っていた。誰かひとりに決められなかったのか…、というかスタッフが勧めても推しが固辞してそうだな…などと推測していた。

この日の夜、加入記念日ということで前から予告してくれていた通り配信があったのだが、そこでその話になった際、
「(全員で言うのは)3章時代のリリイベでやったことがあって、やるなら今日だと思った。」
「3期も6周年だけどこの曲も6周年だから自我丸出しにしたくなかった。」
という話をしてくれたのだ。
どこまでも思慮深いアイドルだなあ、と思う。

話を2部のライブに戻そう。
MCを挟んで、3曲目は『STORY』。
(『Summer Lemon』のカップリングで、この曲のセンターは樋口なづなさん。)
4曲目は『飛行機雲、いつか』。
(この曲は元々2期メンバーの浅川梨奈さんが歌っていたパートを推しが引き継いでいる。)

ここまでは私自身全力で振りコピをしていた。
(個人的に振りコピは「しよう」と思ってするものではなく身体が勝手に「している」ものなので、そのまま踊るだけ、なのだが。)

5曲目のイントロがかかる前、正直私は推しの大好きなあの曲の存在を忘れていた。
ときめきHighレンジ!!!』である。
(余談だが、スパガの曲名は!の数や☆や♡などの記号、「虹色」という言葉の表記の違いなど、正確に表記するのがとても難しい。)
この曲もゆめりがセンターなので、その立ち位置や振りを推しがカバーすると思っていた。
だが、少し違った。
冒頭の「ときめいて きらめいて」というパートで、普段はゆめりが流れてくる音声に合わせて口パクをするのだが(何故かここだけはいつも完全に口パクである。理由知ってる人いたら教えてください。)、ここは完全にゆめりの立ち位置を誰もやらなかった。埋めることは簡単にできたはずなのに。
私にはそれが「ゆめりの立ち位置を空けて待っているよ」、というメッセージにも見えた。
それに心を打たれてしまい、呆気に取られているうちに2サビまで終わり、ゆめりのソロパートがあった。推しがゆめりの立ち位置に入る。

早く気づいて いや気づかないで
揺れ動く気持ち いつでも君のことしか見えない

なんというか、きれいだった。

歌い終わり、MCがありメンバーがはけた後、私は満足感で思わず天を仰いだ。

今年の夏は、絶対忘れられないものになる。


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