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「答え合わせ」の旅㉗

第3の都市で平和の周りを何周も

ロッテルダムでの朝は遅かった。朝食もついてなく、予定も決まっていないので、何時に起きるぞ!と自分に誓いを立てないまま寝るとこうなるようだ。

昨日買ったご飯たちとか余り物を食べる。
朝からケトルを沸かし、備え付けのティーパックを探し当て、お紅茶なんて入れたりして。はーさてさて。今日は何するんだっけ?
詰め込みマンにしては珍しくスケジュールにはデン・ハーグ、(デルフト)、サッカーとザックリとしか書かれていない。

デン・ハーグねぇ。
デン・ハーグはオランダ第3の都市と言われている。
アムステルダムのダム広場に王宮はあったが、実際のところ国王様たちはこちらに住まわれてるらしい。官公庁とかもこちらに多くまぁ日本の霞ヶ関という印象。
有名らしいマウリッツハイス美術館は予約をとってないが、調べると本日は午後から開くらしい。行けるっちゃ行ける。ここにはフェルメールの耳飾りの少女がいつもいるんだが、彼女はいまフェルメール展にお出掛けしてるので家主不在状態。フェルメール以外の画家にも精通してないし、美術館は時間をとられるからなぁ。
とりあえずデン・ハーグで国際司法裁判所を見て。うーんどうしよっかなぁ。

圧倒的に下調べが足りてなく、準備のペースも進まない。予定を詰め込めず、あてもない旅がお好きな人もこの世には多く存在するようだが、私はどうしたって回りたいところを回りまくってタスクをこなすスタンプラリー方式旅。なのでいまの状況はひどくソワソワする。

言うて「月のもの」中。そして昨日大移動を遂げたのだからこれぐらいダラダラして当然なのだ。
朝の準備中に日本語の発声練習として2本もインスタ配信を回し、昨日の様子と今日の予定を語る。
そうなのだ。今日のメインはあくまでも夜なのだ。中学のときに目覚めたオランダフリークは2010年にサッカーW杯に出会い、オランダ代表にも着手する。
その試合観戦が今日のメインなのだ。

気付けば10時近い。金庫修理に来る時間が迫っている。なにがGO OUTしてる予定だ。全然まだ部屋にいるじゃないか。駆け足にスーツケースに鍵をかけ、バッグに鍵をしまった。とりあえず行こう。
デン・ハーグへ。

外へ出ると、ショッピングモールのテナントの窓を長い長い長いブラシで窓を洗う人が。やばー、すっげーと口から漏らす。しかも水出る仕様。絶対重そう。

9292のcurrent locationで現在地からのDen Haag Centraal Stationを調べるとRotterdamCentraalStationまで行かずともあの徒歩3分のスーパー近くのメトロ駅から行けるらしかった。
なんとなんと。NSに乗るのかと思ってたからこれは嬉しい誤算。しかもメトロなら昨日買ったTourist Day Ticketが使えるということ。チケットを撫で回したい。それがしまってある胸ポケットを叩く。

このロングコートの胸ポケットが実はこの旅で大活躍していた。何に使うかわからないぐらいの幅で縦に開いたポケットは、日本では活用されることがなかったのに。
この国にきたら各種チケットをしまうのに最適であることに気付く。脇腹?腰?付近のよくありがちなポケットにはスマホをしまうため、スマホの出し入れで落としてしまう危険も排除できる。
このコートにして良かったなぁと思う。

ポケットが写ってる写真がなかなかなくて
心のふるさとユトレヒトの写真から

下りエスカレーターでメトロの改札へ。
メトロだメトロだ!アムステルダムでも乗りたかったけど乗り損ねたメトロにこっちで乗れるとはね。
チケットをかざすとウォンっと言って改札ゲートが開いてくれた。ほんとだ、デン・ハーグ行き。終点まで乗れば良いのも初心者向け。いいねいいね。

メトロは今まで乗った乗り物の中で一番静かだった。この静けさが日本の乗り物を思い出す。なんだか心地よいというか落ち着く。
この国は想像してたよりずっとずっと治安がいい。
ショルダーバッグを窓側に寄せ、ギュッと取手部分にも手首にからませ少しウトウトできる。その必要もないんじゃないかと思わせるくらい安全さを感じる。
他の国じゃこうはいかないだろうな。ヨーロッパ一人旅なら絶対この国を推す。

こもった音声はデン・ハーグと聞こえる。窓越しにはなんだか近未来な駅舎が見えてきた。
うわぁデン・ハーグ。やるじゃん。
国鉄のNSとメトロが交差してさらにはトラムだろうか。鉄オタ必見。このガラス張りの駅舎から降り注ぐ陽射しがまたなんとも清廉さを感じる。
デン・ハーグの第一印象は悪くないね、だった。

到着直前の車窓から。

唯一行こうと予定してた場所、国際司法裁判所はまずバスに乗るらしい。降りてからなんてことない場所にあるはずなのに、バス乗場をぐるぐる探してしまった。
駅が何層にもなっててどの階のどの口に出ればいいかわからないのだ。

やっと見つけたバス停。そしてバス番号的にもあってるはずの停留所で待つ。でもこれで着かなかったら怖いな、と不安に駆られ国際司法裁判所のGoogle Mapを表示したまま、ついたバス運転手に見せてこのバスでOKか聞いてみた。
黒人の運転手さんはそれを見て、いやほぼ見てなかったが「I don't know」と言ってきた。いやいや。わかるやろ。こっちこそアイドンノーだ。

あの9292が言ってるのだから90%合ってるはずだが、アイドンノーなんて言われたらちょっと不安になる。ひよってそのバスから降りてしまった。
アイドンノー対決は私の負け。降りてからも9292を連打し、やっぱこの乗場だろうなと次のバスを待った。
もう次は聞かない。9292を信じると決めて乗ったバスは9292の進行通りに進んでるようだった。
やっぱりこの国で一番信頼できる友達は9292だ。

次だ、と降りた先には国際司法裁判所。
私が憧れた国連の主要機関のほとんどがニューヨークに位置するが、これだけはここオランダにあるのだ。
そんなうっすらとした知識といまここで見れる体験が合致する瞬間が、私は人生で一番好きかもしれない。

寄り。
引き。

何人か人がいて写真を撮っていた。博物館的になって入れそうな気もしたが、全然わからなくてしばし誰か入らないか見張っていた。団体以外誰も入らないので侵入はやめておいた。
くしくも、この旅にくるちょっと前にロシアのプーチン大統領に国際逮捕状が出た。それを出したのもここの機関。しかし侵攻はいつまでたっても終わらない。
国連含め国際機関が力を成していないのは段々と明るみに出ていたが、明白になった。

石で平和を語っている。む、日本がちょっとしょぼい。
石に優劣があるかないかなんてわからないが、でもなんだろ、もうちょっと…ねぇ。せめて大きさ!こじんまりしちゃって。なんかなかったかな。

平和宮。というのがあるらしい。どこだ。
地図はここいらを差してるのに。どれがそれなんだ。この国際司法裁判所をぐるっと回ってみるか。インスタライブを回しながら歩くが、建物はどんどん離れ庭しか見えない。えーどこだよ、と思いながら回る。

しかし寒い。今回はキューケンホフ公園の反省から手袋もマフラーも同行してきた。それでも鼻水でてくるくらいに寒い。そして人がいない。みんなどこにいるの。
道はとうとう敷地沿いすら歩けず住宅かビルが立ち並ぶようになってきた。こっちじゃないな、きっと。と思いながらもGoogle Mapの情報だとあるはずなのに、と思いあぐねる。

でもいい風景だ。この建物なんてオシャレだ。パシャリ。絶対有名なとこだな、とGoogle Mapを見るとただのスポーツジム。吹いた。ジムと知ってから途端に色褪せて画像も後程捨てた。

なにやら国旗のある建物が。急な国旗クイズは大外れ。近付いた建物にAustraliaと見て、そうかオーストラリアか。たぶん大使館だ。

そうだデン・ハーグには日本大使館があるんだった。せっかくならあとで歩いて探してみるか。
しかし一向に平和宮がない。いったいどこなんだ。敷地からもだいぶ離れてしまった。見落としたかもしれない、と逆戻り。国際司法裁判所に着く。ない。いや、やっぱさっきのとこをもっと奥に行くのか?もう一度回る。ない。戻る。国際司法裁判所に着く。何周すんねん。やめだ。
平和の象徴の周りを右回りに左回りにも回った。
お百度参りのように私が回った分だけ世界が平和になればいいのに。

後日調べると、国際司法裁判所(平和宮)という文字を見た。は?「平和宮 画像」で検索すると国際司法裁判所が出てくる。は?まさか。
タネ明かしはこうだ。この建物が平和宮と言って、この中に国際司法裁判所含めいくつかの機関が入ってるらしい。なのでこれが平和宮なのだ。時間と体力返せ。

この表記ずるくない?
改めまして平和宮でございます

パカラッパカラッ。急に道路に馬!風情ありますね。
大使館を調べると歩いていけるようだ。またそっちか。何度も回った道の方でうんざりする。

ついた。日本語と日の丸国旗。はぁいいね。
次来たときパスポート失くしたら来れるな。うんうん。

さて。次の予定が決まってない。でも二択まで絞った。
マウリッツハイス美術館か、デルフトへ行く。
この二つならほぼ決まりだ。
そちらへ行こう。新しい街はもしかしたらまた肌に合うかもしれない。

9292はデルフトへの行き方を検索し始めた。