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生まれたときから嫌いなもの。

マヨネーズが嫌いだ。


 卵自体は食べれるし、酢も全然余裕で食べられる。むしろ好きなほうである。

しかしそれらが合わさると途端に食べられなくなる。もはや食べられる、食べられないの問題ではなく、拒絶に近い。

別になにか明確に嫌いになる出来事があったわけではない。

マヨネーズに親を殺されたとか、好きだった女の子を盗られたとか、お金を貸してあげたのに一向に返してくれなかった、とかそういうわけではない。現世では。

もう物心ついた時からダメだった。きっと前世でなにかあったのだろう。

あのクリーム色の見た目も、鼻にツンっと来る匂いも、赤いキャップも、見るだけで顔をしかめてしまう。指に付こうものならきっと発狂して倒れる。それくらい嫌だ。


 僕がこんなにもマヨネーズのことを忌み嫌っているというのに、奴は本当にいたるところに生息している。


 小さい頃から、春になると家族でお花見をする。これには祖父母も呼んで大勢でやるのが家の恒例行事になっている。

毎回母方の祖母がお弁当を作ってきて、それを食べながら桜を楽しむ。なんて微笑ましい光景だろう。僕もお弁当を頬張りながら、春を感じて楽しんでいた。

奴が現れるまでは。

父方の祖母がビニール袋からそれを取り出した。じゃがいも、にんじん、きゅうり、ベーコン、そしてマヨネーズが和えられたもの。

そう、ポテトサラダだ。

じゃがいももにんじんも、きゅうりもベーコンも、それぞれなら好きだ。というかそもそものポテンシャルが高いだろ。なんでマヨネーズなんかと組んでしまうのだ...

まぁ無理に食べさせられたりはしないので、それはいいのだが、毎回毎回作ってきてくれるのに食べてあげられないことがとても胸が痛い。

そう思うなら我慢して食べればいいじゃん。

たわけぇ!!

我慢して食べれるもんならとっくに食べてるわ!!

なんかもうマヨネーズに関してはそういう次元じゃないんだよ...

ごめんな、少年。


 こないだ友人と中華料理屋に行った。食べ放題のコースだったのでメニューを配られ、何を食べようかとそわそわしながら見ていた。

麻婆豆腐、焼き餃子、エビチリ、ラーメン、青椒肉絲、チャーハン...

お、奴がいないぞ。見渡す限り奴が所属していそうなメニューがない。これは大発見だ。

どこの国の料理にもマヨネーズは「当然いますけど?」みたいな顔で存在し、そのたびに悔しい思いをしてきた。

何度サンドイッチを諦めたことだろう。

何度ピザを諦めたことだろう。

何度サラダを諦めたことだろう。

ほんとマジでどこにでもいる。世の中マヨネーズだらけだ。くそったれ。

さて、話を戻そう。

中華料理屋のメニューを見ると、マヨネーズが使われてそうな料理がない。ここで急に僕の中での「信用できる国ランキング」のトップに中国が躍り出た。

あまりの嬉しさに「いやぁやっぱり信頼できるのは中華料理だけだわ」と声に出してまで言ってしまった。何のことかさっぱりわかっていない友人は笑っていたけど、僕にとっては大発見であった。

世紀の大発見を果たした僕は注文を決めるためにメニューを見ていった。

餃子もいいな、ラーメンもいいな、北京ダックとか食べてみようかな、とメニューを楽しく見ていた。

お、裏もあるのか。世紀の大発見をした僕はどうやら視野が狭まっていたらしい。裏面があることに気づいていなかった。

裏には杏仁豆腐やマンゴープリン、ごま団子などのデザート集団。

その上のセンターに「エビマヨ」。

前言撤回。

ここにも我が物顔で居やがった。マヨネーズ。

だあああぁぁぁぁあああああ!!

マジでなんでこんなにどこにでもいるのぉぉぉおおおお!!

そんなにみんなマヨネーズ好きなのかぁぁぁぁあああぁい!!

こうして僕の中華料理に対する絶対的信頼はものの30秒くらいで儚く散った。


 きっと誰しも嫌いな食べ物、飲み物、調味料というのはあるだろう。僕はそれがたまたまマヨネーズだったってだけだ。

食べられないこと自体は別に悲しくも悔しくもない。だって無理なもんは無理だし。

ただ、マヨネーズくらい大丈夫でしょ。みたいな感じで食べることを強要してくるのはやめてほしい。

別にアレルギーな訳ではないが、本当にどうしても嫌なのだ。自分でもなんでこんなに嫌いなのかわからないが、どうしても食べたくないし触れたくないんだ。

たこ焼きにも、お好み焼きにも、サラダにも、サンドイッチにも、ピザにも、ハンバーガーにも、本当に何にでもマヨネーズをかけるが、ちょっと待ってほしい。

果たしてそのマヨネーズは必要なのだろうか?

いや、もちろん食べられる人からすればかけたほうがいいのだろう。

ただ、かかっていることによって食べられなくなる人もいる。

世の中はそれが分かっていない。本当に。マジで。切実に。

もう何にでも好みでかけられるように別途でつけてくれよ。頼むよ。

やめよう。マヨネーズ・ハラスメント。

ストップ。マヨハラ。


 散々、嫌いだ、苦手だ、と書いてきたけど別に消えてほしいとかそういうわけじゃないんだよ。

どうしても僕は君と仲良くなれないんだよ。

ごめんな。本当に。

来世では、仲良くできたらいいなと思ってるよ。

いや、冗談じゃなくて。本当だよ。本当。

ってことで今世はごめんね。


マヨネーズには、まぁ、用ねーっす。



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