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短編「何も気にならなくなる薬」その96

公式

愛くるしい

怪奇現象



「今回の依頼ですが、怪奇現象をもっと身近に感じてもらうため、愛くるしいキャラクターを公式サイト用に作っていただきたいのです。いわゆるマスコットキャラクターです」
「はぁ、でも、怪奇現象っていうのは珍しいから怪奇現象なのであって、普段から馴染みのあるものになってしまえば、そのアイデンティティをうしなってしまうのでは」
「あくまであなたは依頼されている側なので、細かいことは気にしないでください。私達の方では資料の指定をしません。詳しいことは、そちらで調べて頂き、いくつかプロットを作成してください」
「……なんだか変な仕事引き受けちゃったなぁ。とりあえず適当にインターネットで調べてみるか。カチカチカチっと、えーなになに、怪奇現象サイト、そのまんまだな。地味というかなんというか……
ポルターガイスト、火の玉、UFO、妖精ね。まぁ、聞いたことはあるけども。とりあえず適当に描いてみるか。よし、燃えてるUFOなんてのはどうだろうね。とりあえず送ってみるか」
「イラスト確認させていただきました。有難うございます。こちらとしましては、燃えているUFOというのはいささか怪奇現象に見合わないように思えますので、他の案を頂けましたら幸いです」
「なんだよ、そんな物があったら面白いと思うけどな。まぁいいや。他にも調べてみよう。なになにファフロツキーズ?魚や動物が空から降ってくると……じゃあこういうのはどうだろうね、空飛ぶ魚をモチーフに焼き魚にしてみるか」
「イラスト確認させていただきました。
できれば生きているような存在が好ましいです」
「すると、怪奇現象は生きていることになるのか……人の形をしているのがいいか、このアイスマンなんかいいな、ってミイラか、これでどうだっ」
「アイスマンは歴史ある存在です。他のご検討を」
「なんだかな、じゃあ、光を操る霊媒師っと」
「これは科学で証明できます。他には」
「注文が多いな。天使、は宗教的にとか文句を言いそうだなぁ。はぁ、この仕事、荷が重かったかもしれないなぁ。誠に申し訳ありません。今回の案件は私の技量では到底クライアント様のご期待にそえるものをお作りすることが難しいかと思われます。同業者のご連絡先をいくつか送らせて頂きます。っと、あんまりこういうのには関わらないでおこう」

……
「今回も辞退されましたね」
「だが、我々に関する情報は出てこなかった。我々は怪奇現象としてはまだまだ未熟らしい」

美味しいご飯を食べます。