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短編『何も気にならなくなる薬』その177

以前からちょこちょこ話しているのだが、kcal計算をしている。
一ヶ月に1キロ痩せるために食事の摂取kcalが2000〜2100を目指している。
つまるところ毎日記載をしている。
あくまで目標なので超えてしまう日があることは大目に見ている。
それでもなかなかに順調だと思いたい。
3ヶ月も記録に取るようにすると「あれは確か何kcalだから、今食べるとちょうどいいな」と考えられるようになる。
自分の食べたい物を知れるのはもちろんのこと、
普段食べない食事にも興味が持てるようになる。
というか興味を持たないといつも同じ様な食事になってしまう。
食べること自体にはあまりストレスを感じたくはない。
ただでさえ、生きているだけでストレスが多いのだから。


「茶葉」

「闇」

「砂浜」
単語ガチャを使っているが、相変わらず突拍子もない単語が並ぶ。
知らない言葉を知るのにもいいし、頭の体操にはちょうどいいだろう。

茶畑に日が差し込む頃、すっかりとその暗さはどこか遠くへ、地球の反対側に消えてしまった。
茶葉の瑞々しい姿に陽の光が反射し、より一層美しく魅せる。
その様な景色が見られたのは昔のことだろう。
インフラが拡大し、高速道路からそうした茶畑を見ることができるのようになった。
全くもって光のない。完全な闇というのはそうそう見つからなくなってしまった。
「そんなものを見に行こう」そう口に出した彼の運転に身を任せ、夜道を走ること数時間。
次第に車のライトだけが頼りになった道を進み、車のエンジンを落とすと辺りはすっかり暗くなった。
目の中に残っている明かりがほんの少し眼の前、自分の体程度は確認できる。
「天気が良ければ夜空も見えるけど」
空は曇っているのだろう。月明かりはない。
遠くの方で波の音だけが聞こえる。
「少し進めば砂浜だよ」
言われるまま前へ進む。
どこか深いところへ落ちてしまいそうな、これ以上は進んではいけないような、そんな不安に押しつぶされそうになりながら砂浜へと足を踏み入れる。
「どう、真っ暗?」
「目が慣れてきたのかな、思ったよりも明るい気がする。それに星も少し見えるし」
「流石に真っ暗闇はなかったか」
少し残念そうに言葉をこぼした彼の声はそこまで落ち込んでいるようではなかった。
「落ち込んだらまたここを思い出そう。どんなに暗く感じても必ず光はあるから」

美味しいご飯を食べます。